小羽根と自由な仲間達
「部員の数?…何人いたっけ?」

えっ。

まさかの。天方先輩、部員数を把握ていらっしゃらない。

「あなた部長じゃないですか。部員の数くらい分かっててくださいよ」

えっ。

天方先輩って、部長だったんですか?

「天方先輩が部長…。…副部長はどなたなんですか?」

「俺だよ」

佐乱先輩が挙手した。

「あ、佐乱先輩なんですか…。良かった…」

「おい待て。良かったって何だよ」

済みません。部長はアレだけど、副部長は比較的まともそうな人なんだなって。

ちょっと安心しました。

しかし、そんな佐乱先輩でも。

「確か、今のところ部員は…俺達入れて、9人…いや、10人行ってたんだっけ?」

なんと、佐乱先輩まで部員数を把握していない。

…嘘でしょう?

「3月に先輩達が卒業したから、今は9人じゃないかな」

「あぁ。そういやそうだったな。じゃあ9人だ」

「じゃあ…他に、あと4人いるんですか?」

久留衣先輩が横から助言してくれたお陰で、現在の部員数が発覚した。

「いるけど、他の四人は幽霊なんだ」

「え、ゆ、幽霊?」

「幽霊部員ってこと。だから、実質活動してるメンバーは、この5人だけだよ」

と、久留衣先輩が教えてくれた。

あぁ、成程そういうこと…。それで、天方先輩も部員数を把握してなかったんだ。

幽霊部員か…。入部はしたけど、部活動にはほとんど参加してない…もしくは、全く参加していない部員のことですね。

「他に質問は?」

「え、えぇっと…。じゃあお言葉に甘えてもう一つ…」

僕は、天方先輩…改め、天方部長を指差した。

「…この部長は、何で部活動中に宿題をやってるんですか?」

「うっ…。いてぇ!後輩君の的確な正論が突き刺さる!」

放課後は部活動をする時間であって。

部室に集まっている以上、宿題じゃなくて部活動をやるべきだと思うんですが。

どうでしょうか。

「実際小羽根さんの言う通りですから、言い返せませんね、まほろさん」

「うぐっ…。わ、分かったよ…。部活の話するよ」

と言って、天方部長はノートと筆記用具を鞄の中にしまった。

はい。そうしてください。 

「で…今何部なんだっけ?」

は?

「料理研究部だろ」

「あぁ、そうだそうだ。この間テレビで料理番組やっててさー。料理研究部って楽しそうだなーと思って」

「そういう動機なのかよ…」

「おうちで簡単!本格イタリアン、っていうテーマでさ」

昨日ピザを作ってたのは、そのテレビの影響だったんですね。

影響されるのは良いとして、見切り発車でピザ作りに手を出すのはどうかと思うんだ。僕。

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