小羽根と自由な仲間達
そして、案の定。

迎えた放課後。健康追求部の部室では。

「はー…。まだ腹が重い」

「食べ過ぎなんだっての…。今晩はおかゆだな…」

「ここ数日分のカロリーを、一度に摂取したって感じですね」

およそ、健康を追求している部活とは思えない。

先輩達は、それぞれテーブルに着いてだらーんとしていた。

…昨日の食べ過ぎが、一日経っても尾を引いているようだ。

かく言う僕も他人事ではない。

お陰で今日のお昼休みは、カットフルーツの盛り合わせと、市販の野菜スムージーしか口にしなかった。

美味しいのは確かですが、しばらくハンバーガーの顔は見たくないですね。

しかし、そんな先輩方の中で、一人だけ元気なのが。

「萌音はもう何ともないよ?昨日はちゃんと、腹5分目くらいで食べるのやめたから」

と、萌音先輩。

…あれで腹5分目なんですか?僕らより相当食べてましたけど。

「しかも、こんな思いしてもなお、ルトリアきゅんのアクキー当たんないしさぁ…」

嘆くように言うまほろ部長。

あ、えぇと。それなんですけど…。

「案の定、Twittersでめちゃくちゃおりゅられて、すげー悲しかったんだけど!」

「そんなの仕方ないだろ…。16回も引いて当たらなかったんだから、もう諦めるしかないだろ」

「嫌だ!諦め切れない!自分もルトリアきゅんを当ててTwittersに画像あげて、おりゅするんだ!」

…昨日も思ったんですが、おりゅって何ですか?

専門用語…?

「だったら、もうフリマサイトで買ったらどうです?」

「嫌だ!転売には屈しない!」

「だって、何回引いても当たらないんだから、他に方法がないでしょう」

「ぐぬぬ…!でも違うんだよ。転売には屈したくないの!だってプレミア価格じゃん!」

そうなんですか?

「それでも、昨日費やした16000円よりは安く手に入るのでは?」

「そ、そうだけども…!」

「これからルトリアさんが手に入るまで、あと何千円注ぎ込むつもりですか。たかがアクリルキーホルダー一つの為に」

「ぐぬぬ…!」

唱先輩のド正論に、言い返す言葉もないまほろ部長。

…えーと…。

「まだ諦めん…まだ諦めんぞ!キャンペーンが終わるまでに、また『MKハンバーガー』に…」

「あのー…まほろ部長…」

「どうした後輩君。君も付き合ってくれるのか?」

いえ、それは違います。

「そうじゃなくて…あの、これ…ルトリアさんのアクリルキーホルダー…」

「…」

僕は、鞄の中に入れて持ってきていたキーホルダーを、そっとまほろ部長の前に出した。

まほろ部長の目は、キーホルダーに釘付けになっていた。

「加那芽兄様…じゃなくて、兄にもらったんです。まほろ部長がルトリアさんだけ当たらなかったんだって話したら…それじゃ、サンプルにもらったこのキーホルダーを渡してあげてくれ、って…」

「良かったら、どうぞ…」

「…」

…えっと。何で無言なんですか?
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