小羽根と自由な仲間達
翌日。

料理研究部に入部して三日目のその日。

ついに、料理研究部らしい活動を行うことになった。

部員全員、エプロンに三角巾をつけ。

石鹸でよくよく手を洗って、ついでにアルコール消毒もして、準備万端。

天方部長のテンションもマックスである。

「よーし!お前ら、本格イタリアンが食べたいかーっ!?」

「おー!」

天方部長が大声で問いかけ、弦木先輩と久留衣先輩が揃って拳を突き上げた。

…えぇっと。

…早速調理が始まると思ったんですが、何ですかこの茶番?

「ピザとかカルボナーラとか、えーと、サルボンティッカ?を食べたいかーっ!?」

「おー!」

…要ります?この茶番。

あと、サルティンボッカですよ。

先輩達の奇行を、ぼんやりと眺めていると。

キッ、と天方部長がこちらを睨んだ。

「おい、そこの後輩君!」

「は、はいっ?」

びっくりした。何ですか。

「声が小さいぞ!君はこの中で一番若いんだから、一番デカい声を出さなきゃ駄目じゃないか!」

何?このパワハラ。

「ど、どうすれば良いんですか?僕は」

「皆に合わせて、おーっ!って言うんだよ。もう一回やるから、ちゃんとついてくるんだぞ!」

え、えぇ…。

ほ、本当にやらなきゃいけないんですか?物凄く、その…小っ恥ずかしいんですけど。

「本格イタリアンが食べたいかーっ!?」

「お、お、おー…」

「声ちっせぇ!やる気あんのか!」

す、済みません。

大きい声出すの苦手なんです。

「もっと腹から!腹から声を出すんだ。この程度で恥ずかしがってるようじゃ、ウチの部ではやっていけんぞ!」

「そ、そう言われましても…」

料理の研究に、そんな雄叫び必要ですか?

「ほらもういっちょ!えーと、パイナップルのピザとか、ビーフストロングガノフを食べたいかーっ!?」

「お、おー…!…って、それを言うならビーフストロガノフでは…」

凄く、こう…強そうな牛肉みたいになってる。

あと、パイナップルのピザはもう諦めましょうよ。

「まだまだ声が小さい!それが君の本気か!?」

「そ、そう言われても…!」

「…おい。新入部員に無茶振りすんじゃねぇよ」

そこに、僕の救世主が現れた。

遅れ馳せながら調理実習室に合流した、佐乱先輩である。

よ、良かった。ようやくちょっと話の分かる人が来てくれた。
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