小羽根と自由な仲間達
翌日。

今日もガスコンロを借りてきて、クレープ作りの練習を行っている。

その最中に、昨日加那芽兄様に提案されたことを、早速先輩達に尋ねてみると。

「え、マジ?後輩君の兄さんが冊子作り手伝ってくれるの?よろ!」

物凄く、軽い口調で許可された。

…よろ、って…まほろ部長…。

「それなら、我々は心置きなくクレープ作りに従事出来ますね」

「悪いな…。迷惑にならない範囲で頼む」

「助っ人だー。わーい」

他の先輩方も、特に異論はない様子。

…良かった。

「それじゃ、僕達は…クレープの生地を、せめてまともに焼けるように…努力しましょうか…」

「まともに…?出来てるじゃん、ほら!」

まほろ部長は、自分が焼いた「クレープ」を掲げて見せたが。

「何処がまともなんだよ。焦げまくってるじゃないか」

そんなまほろ部長を、ジトッ、と睨む李優先輩。

部長…いい加減、火力に頼るのやめましょうよ…。

そんな焦げたクレープを食べたら、生地の苦さとホイップクリームの甘さで、頭がバグりそうです。

「しかし難しいですよね。クレープの生地を焼いてるはずなのに、何でただのホットケーキになるんでしょう」

唱部長は、不思議そうな顔で自分の焼いた「クレープ」を眺めていた。

相変わらず、それはクレープの生地と言うより、ただのホットケーキ。

…しかも、真ん中が半ナマ。

「お前は一回に生地を流し込み過ぎなんだよ。どうやってその生地で具材を巻くんだ」

呆れ果てた李優先輩。だったが。

「メープルシロップかけたら美味しいよ」

そんな半ナマの「クレープ生地」に、萌音先輩はメープルシロップをかけて、もぐもぐと食べていた。

食べ物を無駄にしないのは、良いことでも思いますけど。

「…前途、多難ですね」

「…あぁ」

指導に当たってくれていた腱鞘炎の李優先輩が、嘆くように頷いてくれた。

…さて、僕も本腰入れて練習しないとな…。
< 357 / 384 >

この作品をシェア

pagetop