小羽根と自由な仲間達
一時間後。

「…暇ですね…」

「あぁ…暇だな…」

一時間経って、お客さんの数も段々と増えてきて。

それに従って、屋台に食べ物を買いに来るお客さんも増えてきた。

しかし、僕達のクレープ屋『メルヘン・クレープ』には、未だ誰一人お客さんが来ていない。

閑古鳥がぴよぴよ鳴いてるのが聞こえてきますね。

…閑古鳥って、ぴよぴよ鳴くのか知りませんけど…。

「畜生、何でだ…?皆、クレープ嫌いなのか?」

「そういう訳じゃないと思いますけど…」

クレープって、そんなに流行らないんですか?

今の流行りって何なんだろう。向こうの屋台でやってるフルーツサンドとか?

もうフルーツサンドは古いのでは?

今の流行の最先端って何なんだろうな…。僕、流行に乗り遅れるタイプなんですよね…。

「まだ記念祭は始まったばかりだし、そんなに気にしなくても良いんじゃないか?」

と、焦る様子のない李優先輩。

「やはり皆さん、歩きながら食べられるスナック系の食べ物がお好きなようですね」

唱先輩は、冷静にお客さん達が持ち歩いている食べ物を観察していた。

…確かに。

よく見たら、フライドポテトやポップコーンやチュロスなど、歩きながら軽く食べられる軽食を好んで食べているご様子。

まぁ、まだ午前中ですしね…。

ガッツリ食べるには、まだ早い時間。

焼きそばやお好み焼きなどのガッツリメニューは、もう少し後に並び始めるのだろうか。

…そう思うと、クレープを食べたくなる時間っていつですか?

「…難しいですよね。クレープって…」

「え、どゆこと?」

「クレープって、お昼ご飯として食べるには軽過ぎるし…。おやつとして食べるには重くないですか?」

「…言われてみれば…」

クレープって、おやつ感覚で食べるものだと思うんですが。

意外と食べてみると、お腹にずっしり来ません?

よく考えたら当たり前なんですよね。材料からして、生地は薄っぺらいパンケーキみたいなもの。

そこに、たっぷりのホイップクリームと果物、それにアイスクリームまでトッピングしたら、トータルでかなりのボリュームになるんですよ。

かと言って、お昼ご飯に甘いものっていうのも、何だか物足りませんし。

ましてや、こういう場では、一つのものをガッツリ食べるより。

色んな種類の美味しそうなものを、少しずつたくさん食べたいじゃないですか。

そうすると、クレープってかなり不利なのでは…?

「えっ?クレープって軽いおやつじゃないの?」

僕のこの意見に、萌音先輩がびっくり。

「…あのな、萌音。誰もがお前みたいに、一度にクレープ4、5個ぺろっと食べられる訳じゃないんだよ」

クレープ4、5個って。どんなに腹ペコでも無理そう。

萌音先輩にかかったら、このグラウンドの全ての屋台を制覇することも、夢ではないかもしれませんね。
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