小羽根と自由な仲間達
呆気に取られる僕に、天方部長は。

「そろそろ料理研究部にも飽きてきた頃だったからさー。次は何を研究しようかなーって考えてたんだよねー」

あ、飽きてきたって…。

部活動って、そんなとっかえひっかえするようなものじゃないでしょう。

3年間、一つのことをじっくり極めるのが部活動ってものじゃないんですか。

「後輩君が絵描いてるの見て、次はこれだ!って思ったんだよねー」

そんな…。晩御飯の献立を決めるみたいな軽いノリで…。

「料理研究に3年間を捧げようと決めた…僕の決意は何だったんですか…?」

「あぁ、アレね。あの時丁度、イタリアンが食べたい気分でさ。食べたいなら作れば良いじゃん!と思って料理研究部にした」

本当に、そんな晩御飯のメニューみたいな軽いノリで決めてたんですか?

「で、でも…。じゃあ、何で調理実習室に…?」

僕はてっきり、料理研究部だから、調理実習室を部室にしてるんだとばかり思っ、

「あぁ、それは偶然です。部室に出来る空き教室がないので、間に合わせの部室として、空いてた調理実習室を宛がわれただけです」

弦木先輩が、僕の質問にさらっと答えてくれた。

そ、そんな事情だったんですか?

料理研究部だから、調理実習室を部室にしてるんじゃなくて。

たまたま空いてた教室が調理実習室しかなかったから…。この教室が部室になっただけで…。

料理研究部とか…全然関係なく…?

「折角調理実習室を部室にしてるんだから、教室の設備使わなきゃ損かなーと思って、料理研究部やってみたけど…。やっぱり料理は食べるもんだな。作るのは性に合わねぇ」

「李優は料理作るの上手だけどねー」

「料理研究部でやりたいことは一通りやったので、そろそろ次の部活にクラスチェンジしようという訳ですね」

「…」

そ…そんなめちゃくちゃな理屈が…。

…どうしよう。理解はしてる。とりあえず理解はしてるけど、納得が出来なくて頭がくらくらする。

「一体僕は…何部に入部したんですか…?」

ラーメン屋だと思ったらカレー屋になってて、今度はカレー屋からパン屋に変わったり、コンビニに変わったりするんでしょう?

部活の名前が変わる度に、「料理研究部です」と言ったり「芸術研究部」と言ったり、コロコロ名称変更するんでしょう?

昨日まで料理研究部だった人が今日芸術研究部になって、明日また別の部活になってたら。

僕は今後、自分の所属する部を聞かれた時、なんて答えれば良いんだろう。

「今は」芸術研究部です、と答えれば良いんだろうか。

「今は!?」って聞き返されそう。

僕だって意味分かんないんですよ。誰か助けてください。

すると、佐乱先輩が。

「いちいち名前が変わるごとに言い換える必要はない。俺達は自分の部活のこと、『自由研究部』って呼んでる」

と、教えてくれた。

自由…研究部?

「部員達か自分の好きなことを、自由に研究する部活!って意味だ。どうよ?夢があるだろ?」

…物は言い様って奴ですね。

確かに夢はありますけど、そういうことは入部初日に言って欲しかったですね。

詐欺に遭ったような気分ですよ。

「ってな訳で後輩君。改めて、自由研究部にようこそ。歓迎するぜ」

「…どうも…」

…言いたいことは色々とありますけど。

…もう、何も言うまい。
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