小羽根と自由な仲間達
何で、入学して間もない新入生である僕の方が、先輩達より試験の日程に詳しいんですか。

「来週から、試験が始まるでしょう。一学期の中間試験が」

「…そうだっけ?」

「そういえば…」

「去年もこれくらいの時期でしたね」

先輩方にとって試験って、その程度の認識なんですか?

「まさか佐乱先輩も…?」

先輩方の中で一番しっかりしている佐乱先輩でさえも、試験の存在を忘れていたのだろうか。

しかし。

「俺は覚えてるよ。こいつらと一緒にしてくれるな。今は部活の時間だからこうしてデッサンを描いてるが、家に帰ったら試験勉強してるよ」

苦い顔で、佐乱先輩がそう答えた。

それは失礼しました。疑ってごめんなさい。

「良かった。佐乱先輩だけはまともなんですね…」

「おい待て。自分らがまともじゃないみたいに言うな」

あなた方はまともじゃありません。試験の存在を忘れるなんて。

自分達が学生であるという自覚があるんですか?

「天方部長も、久留衣先輩も弦木先輩も…。そんな調子で、よく二年生になれましたね」

「…さっきから後輩君が辛辣だぞ」

「萌音は大丈夫だよ。いっつも、李優が勉強教えてくれるから」

「俺も大丈夫ですよ。俺はほら…地頭が良いタイプなので」

久留衣先輩と弦木先輩は、何故かドヤ顔で答えた。

そうですか。いくら佐乱先輩が教えてくれても、いくら地頭が良くても。

試験勉強は真面目に取り組むべきだと思いますよ。僕は。

普段の勉強も勿論大切だけど、やはり試験前は特別だ。

ましてや、僕にとっては、高校に入学してから初めての試験となる。

ますます気を引き締めなければ。

「大丈夫だって。一学期の中間試験なんて、範囲も狭いし、学年最初の試験なんだから、先生達も大目に見てくれるって」

天方部長は、ひらひら手を振りながら楽観的なことを言った。

余裕ですね…。

「例え先生方が大目に見てくださったとしても、それは試験勉強をサボる理由にはなりませんよ」

「ぐはっ!後輩君の正論がいてぇ!」

そうですか。

「小羽根君は真面目だね。真面目君だ」

と、久留衣先輩。

そんなに真面目である自覚はないんですけど…。むしろ、先輩方が不真面目過ぎるのでは?

「優等生なの?学年で一番を目指してるの?」

「そ…そういう訳じゃありませんけど…。点数が良ければ、それに越したことはないでしょう?」

言葉を濁したものの、久留衣先輩の指摘は当たっていた。

そう。僕はあわよくば、学年で一番の成績を取ろうと目論んでいるのである。
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