ペットボトルと頭痛薬
 ごめん。頭を下げて、新たに付け加えた透馬は、永遠のどんなマイナスなリアクションも受け入れるつもりだった。しかし、向かい側にいる永遠は、淡々と疑問を投げかけたきりなかなか口を開いてくれない。

 背後の窓の外では、一切止む気配のない雨がざあざあ降り続けている。心なしか雨音が強くなっているようだ。頭痛も一向に治まらない。それは永遠も同じだろうか。そう思ったが、一度ここを離れた永遠は薬を飲みに行ったはずだ。透馬の予想通り薬を服用したのであれば、即効性があるわけではないにしろ、気持ち的には楽になっているのではないか。

 透馬と永遠以外の数多の声が渦巻いている中、二人の間には沈黙が広がっている。頭を下げたまま上げるタイミングを見失っている透馬は、その姿勢を維持したまま、動きを見せるかどうかも定かではない永遠の言動を待った。そうしている間も、頭は悲鳴を上げていた。永遠の厚意を蔑ろにした罰なのか何なのか、今日は一段と頭痛が酷い。透馬は小さく唸ってしまいながら片手で頭を押さえた。

「薬、持ってないんだったらやるよ。最近買ったばかりの未開封のものがあるから」

 それなら安心できるだろ。ようやく声を上げて反応を示してくれた永遠が、座っている椅子を引きずり透馬との距離を縮めた。疼痛に顔を歪ませ目を眇める透馬は、机の横に引っ掛けてある鞄に手を伸ばす永遠の行動をその目で追った。手にした鞄を膝の上に乗せてチャックを開ける永遠。中に手を入れ目的のものを取り出す永遠。何気ないそれらの丁寧な所作に釘付けになってしまうのは、透馬自身にそれとは真逆のガサツな部分があるからかもしれない。頭を抱えながら永遠を眺める透馬の視線など気にしていないのか、気づいていないのか、透馬がいくら見つめようとも、その間永遠は一瞥もくれなかった。
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