【完結】梅雨鬱々倶楽部~梅雨と初恋、君の命が消えるまで~

「大丈夫。君は? 雨で冷えるだろう」

 雨は止まずに、ずーっと降り注いでいる。

「私はカーディガンがあるから」

「準備がいいね。僕も次は羽織を羽織ってこよう」

「また此処に来る?」

「梅雨の間はね……少しでも外の世界の空気を吸っておきたいんだ」

「そっか」

「君は制服を着ているから……中学生?」

「こ、高校生だよ」

 子供っぽく見えてるのかな? とコノミはショックを受ける。
 
「学校行かないの?」

「……行かなきゃね……」

 今度はコノミが、少し項垂れる。

「行きたくなさそうな顔だね」

「うん」

「僕は今まで、他人の事なんて興味はなかったんだけど……僕のくだらない話を聞いてくれた御礼に、聞くよ」

「悩みではないんだよ」

 相談をするのは、気が引ける。
 人の相談を聞くのはいいけれど、自分が相談するのは申し訳なく感じるし、なんだか自分で許せない。

「悩みではない、ならば現状を聞くよ」

 なるほど、とコノミは思う。
 それならいいかと思った。

「あは……ええとね、私は落ちこぼれでさ~……優秀なお姉ちゃんと比べられるんだよねぇ」

「お姉さんがいるんだ。僕も一番下の弟だよ。上が優秀なのも同じだ」

 えっ……とコノミは思わぬ共通点に嬉しくなる。

「比べられない?」

「比べられるよ。だから僕はいらない」

「い、いらないだなんて……でも、わかる」

「そうか……奇遇だね」

「あは……奇遇だね。だから今は家もあんまり好きじゃない」

 これは現状を話してるだけ。
 悩みではない。
 本当の事だから。
 彼も何も変わらない表情で聞いているから、大丈夫。

「居場所がない?」

「うん」

「そうか」

「私の名前ね、コノミっていうんだけど。芽がいつまでも出ないって言われる」

 笑って言った。

「ひどいことを言うね」

「でも自分でもわかるの。落ちこぼれで芽が出ない……わかってる」

「友達はいないの? さっき相談をよくされると言っていた」

「いるよ! でも中学校のお友達ね。最近はあんまり会えないし私の現状は知らないの」

 同じ高校にみんなで進学した友達は、楽しそうで羨ましい。
 そんな友達には、家の事も、学校での事も何も話していない。

「それは寂しいね。まぁ僕には友達はいないんだけど」

 サラッと言われたが、寂しいのは男の子の方だとコノミは思う。
 なんだかショックなことばかり。

「じゃあ……わ、私達お友達になろうよ。私がお友達になるから」

「え?」

 男の子は、少しだけ驚いた顔をした。
 コノミも少し恥ずかしくなる。

 
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