【完結】梅雨鬱々倶楽部~梅雨と初恋、君の命が消えるまで~
雨の屋根ベンチで
静かな雨が降る。
「僕はさ、ただ静かに……池からいつ鯉が出てくるのだろう……とか見るのが好きなだけだから」
「鯉……」
「つまりは、無理に話をする必要はないってこと」
ナギサの隣には座らずに、またL字のベンチで一人ずつ。
何を話そうかと、思っていたコノミにナギサがそう言った。
無理に話さずに、黙っていてもいいという事。
「ここにいても……邪魔じゃない? なんにも話さないのに」
「友達って……邪魔になるの?」
「や、ううん! そうじゃない……だよね」
「本を読むなり、好きに過ごしたらいいよ」
「本かぁ……じゃあ宿題やろうかな」
「あぁ、いいね。高校生だっけ。何やってるの? 今」
「えーっと数学の……」
コノミは宿題の説明する。
数学は苦手だ。
「それならわかるよ。教えてあげようか?」
「えっ……わかるの?」
「学校へは行っていないけど、勉強も一応しているから」
「そうなんだ……頭良さそうだもんね! ナギサくん」
「どこを見て?」
ナギサが少し笑った。
「ごっごめんなさい~! だってなんか、そんな雰囲気で」
「ふふ、そんな風に見えるんだ? 謝る事なんかないよ。なんの役にも立たないと思ったけど、君に教えてあげられて君の知恵に立つのなら報われるね」
「ナギサくん……」
やはりナギサの先にあるのは死。
この先には終わりしかないんだろうか?
何歳なんだろう? 聞きそびれてしまった。
「こっちへおいでよ」
「う、うん……」
そんな事を男子に言われるのは初めて。
少し恥ずかしくなりながら、彼の隣へ座った。
お香のような良い香りがする。