【完結】梅雨鬱々倶楽部~梅雨と初恋、君の命が消えるまで~

雨の屋根ベンチで


 静かな雨が降る。

「僕はさ、ただ静かに……池からいつ鯉が出てくるのだろう……とか見るのが好きなだけだから」

「鯉……」

「つまりは、無理に話をする必要はないってこと」

 ナギサの隣には座らずに、またL字のベンチで一人ずつ。
 何を話そうかと、思っていたコノミにナギサがそう言った。

 無理に話さずに、黙っていてもいいという事。

「ここにいても……邪魔じゃない? なんにも話さないのに」

「友達って……邪魔になるの?」

「や、ううん! そうじゃない……だよね」

「本を読むなり、好きに過ごしたらいいよ」

「本かぁ……じゃあ宿題やろうかな」

「あぁ、いいね。高校生だっけ。何やってるの? 今」
 
「えーっと数学の……」

 コノミは宿題の説明する。
 数学は苦手だ。

「それならわかるよ。教えてあげようか?」

「えっ……わかるの?」

「学校へは行っていないけど、勉強も一応しているから」

「そうなんだ……頭良さそうだもんね! ナギサくん」

「どこを見て?」

 ナギサが少し笑った。

「ごっごめんなさい~! だってなんか、そんな雰囲気で」

「ふふ、そんな風に見えるんだ? 謝る事なんかないよ。なんの役にも立たないと思ったけど、君に教えてあげられて君の知恵に立つのなら報われるね」

「ナギサくん……」

 やはりナギサの先にあるのは死。
 この先には終わりしかないんだろうか?
 何歳なんだろう? 聞きそびれてしまった。

「こっちへおいでよ」

「う、うん……」

 そんな事を男子に言われるのは初めて。
 少し恥ずかしくなりながら、彼の隣へ座った。
 お香のような良い香りがする。
< 7 / 21 >

この作品をシェア

pagetop