Candytuft.
 こんなところで、会ってしまったのかと思った。

 気だるげで猫背気味な高身長、太い黒縁の眼鏡。レンズの奥の、少し下がった目尻。
 細くて、長い指。ひとさし指となか指で細い煙草を弄ぶ、その仕草まで。

 あの人に、そっくりだった。

 だから、ひとでごった返している新宿駅前の喫煙所で、その人から目が離せなくなった。
 …怪しい以外の、なにものでもない。

 いつのまにか、満タンだったiQOSの作動時間が半分まで減っている。ひとくちも吸っていないのに。
 それほどに、似ていた。
 自分がなにをしようとしていたか、忘れるくらいに。
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