雨声~形のないラブレター
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「何してはる人に見える?」
「……例の子ぉ?」
「うん」
事務所でかき氷を食べていると、健一郎が事務処理をするためにやって来た。
そんな健一郎に、唐突に質問を投げかけた。
「紫陽花ちゃんと同じくらいに見えるけど、昼過ぎから来てる時もあるさかいなぁ、大学生やらか?」
「ピアノが上手だから、音大生とかですかね?」
「どうやろな」
昨日今日とカフェに来ていない。
毎日のように来ていたから、自分がした行いが原因なんじゃないかと思えてならない。
「次来たら、珈琲代はうちのバイト代から差し引いといて下さい」
「まだナンパ続けんの?」
「いや、そうちゃうくて。彼に悪いことしてもうたみたいやから」
「ん?」
「おとついのバイト休みの日に、気になって来たんですよね」
「……ん」
「そしたら、コンコースに置かれてるストリートピアノを弾いとって。思わずガン見してもうたんです」
「おおおっ」
「で、彼と目ぇ合うたら、速攻で逃げられてもうて」
「うわっ、それ完全にお断りのフラグ立ってるやん」
「……はい」
時間は巻き戻せない。
勝手に珈琲を取り替えたことも、思い込みで手話で話しかけたことも。
演奏を邪魔するみたいにガン見したことも。
今さら謝ったところで、何の解決にもならないのだろうけど。
もし、彼がまたカフェに来たのなら……。
「何してはる人に見える?」
「……例の子ぉ?」
「うん」
事務所でかき氷を食べていると、健一郎が事務処理をするためにやって来た。
そんな健一郎に、唐突に質問を投げかけた。
「紫陽花ちゃんと同じくらいに見えるけど、昼過ぎから来てる時もあるさかいなぁ、大学生やらか?」
「ピアノが上手だから、音大生とかですかね?」
「どうやろな」
昨日今日とカフェに来ていない。
毎日のように来ていたから、自分がした行いが原因なんじゃないかと思えてならない。
「次来たら、珈琲代はうちのバイト代から差し引いといて下さい」
「まだナンパ続けんの?」
「いや、そうちゃうくて。彼に悪いことしてもうたみたいやから」
「ん?」
「おとついのバイト休みの日に、気になって来たんですよね」
「……ん」
「そしたら、コンコースに置かれてるストリートピアノを弾いとって。思わずガン見してもうたんです」
「おおおっ」
「で、彼と目ぇ合うたら、速攻で逃げられてもうて」
「うわっ、それ完全にお断りのフラグ立ってるやん」
「……はい」
時間は巻き戻せない。
勝手に珈琲を取り替えたことも、思い込みで手話で話しかけたことも。
演奏を邪魔するみたいにガン見したことも。
今さら謝ったところで、何の解決にもならないのだろうけど。
もし、彼がまたカフェに来たのなら……。