雨声~形のないラブレター
四日間の期末試験を終え、四日ぶりにバイト先のカフェへ向かう。
四日前のあの日。
彼と初めて会話できたことは嬉しかったけど、完全に嫌われてしまっただろうな。
テスト勉強をしなければならなかったのに、結局殆ど頭に入らなかった。
これで赤点でも取ったら、バイト自体危うくなってしまう。
ううん。
そもそも、彼はもうカフェに来てないかも。
「はぁ…」
健兄に謝らないと。
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「……え?」
バイト先のカフェがある駅で下車した紫陽花の目に飛び込んで来たのは、ホームの椅子に座る、例の美男子だった。
電車に乗るためにホームで待っているなら、反対側のホームのはず。
気分が悪くて、ベンチに腰掛けてるとは思えない。
だって、私を見つけてこちらへと歩いて来る。
「五分だけ、いい?」
「……はい」
どういうこと?
てっきりもう、会えないと思ってたのに。
まさかまさか。
彼から話しかけて来るだなんて。
同じ駅で降りた人々が横を通り過ぎてゆく。
その人たちを呆然と眺めるように見ていると。
「ここじゃ邪魔になるから」
「ッ?!」
この間は私が彼の腕を掴んだけれど。
今日は私が掴まれている。
改札の手前にある柱の所で立ち止まった彼。
すらりとした長身の彼の顔を、思わず見上げてしまった。
「あのさぁ…」
「……はい」
「バイト、辞めたわけじゃないよね」
「……へ?」
「何でここ数日来なかったの?」
「……」
どういう意味?