雨声~形のないラブレター
もしかして、私がバイトに来なかったから、気にしてたってこと?
「期末……試験だったんです」
「へ?……あぁ」
「バイトは姉の代打なので、暫く続けないとならないので、辞めれないというのが正しいかもしれませんけど」
「え?」
カフェの内部事情だなんて、知るわけないよね。
「あのカフェ、姉夫婦が経営してて。今月末に出産予定なんです、姉が」
「……」
「だから、暫く仕事は出来ないので、姉の代わりにバイトに入ってるので」
「……そっか」
「すみません」
「何で謝るの?」
「……色々と嫌な気分にさせたことを謝ってなかったので」
「……」
今日も掠れている声。
風邪を引いて掠れているんじゃなくて、地声がハスキーなのかも。
「もう1つ、質問していい?」
「……はい」
「何で俺に手話したの?」
「手話だと分かったんですか?」
「……最近、勉強してるから」
「そうなんですね」
「答えになってないけど」
「あっ……」
真っすぐ向けられている視線は、先日の冷たい突き刺さるようなものとは少し違う。
拒絶はされてないけれど、歓迎もされてない。
強いて言うなら、追求する……みたいな。
納得ができる答えを言って欲しいという表情だ。
「さっき話した、出産を控えてる姉、聴覚障害があるんです。補聴器をつけてても殆ど聞こえないくらいの。だから、物心ついた頃から姉との会話は手話でしています。カフェのスタッフが、オーダーする際にメニューを指差しすると話してたので、つい聴覚に障害があるのかな?と思い込んでしまって…。本当にごめんなさい」