極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
午後になり、約束の時間に水槽のリース会社がやって来て、オフィスに大きな水槽を設置する。

事前にオフィスの写真を添えて大まかな希望を伝え、あとはお任せにしたが、予想以上の空間に仕上がり、皆で感嘆のため息をついた。

「すごいなー。シックだし、高級感が溢れてる」
「ああ。オフィスの雰囲気もグッと良くなったな」

モノトーンの大きな水槽に、ブルーのライト。
ゆらゆらと揺れる水草の中を泳ぐ、色とりどりの小さな魚達。

水槽の前にカウンターを設け、ちょっとしたパソコン作業や休憩にも利用出来るように、カウンターチェアも並べた。

「わあ、綺麗。お魚達、可愛い!ずーっと見ていられる。癒やされるなあ」

瞳子はカウンターチェアに座り、うっとりと水槽を見つめる。

「ほんとだね。ここでお菓子食べたら最高だな」

瞳子の反対側から透も水槽を眺めていた。

「もう、透さんったら。またお菓子?」
「うん。仕事もおやつもはかどりそうだよ」
「おやつって、はかどるものなんですか?」
「もちろん。あ!ひときわ可愛いお魚がいる…と思ったら、アリシアの綺麗な瞳だった。あはは!」

アホー!と、大河の声が響く。

「お前はもう…。早くデスクに戻れ」
「やだよ。水槽見てたら、イメージが湧いてくる気がするんだもん」
「水槽通り越して瞳子を見てるだけだろ?」
「そうとも言うね。だってお魚とアリシアのコラボ、絵になるんだもん。もうリトルマーメイドの世界だよ。うん、いいアイデア浮かびそう!」

サラリとそう言う透に、大河はムキーッと怒りを露わにする。

「そんなに水槽見たいなら、一人でここに行け!」

そう言って大河は、カードケースからビジネスカードを取り出して透に差し出す。

「ん?Bar. Aqua Blue?」

透が呟くと、洋平が顔を上げた。

「ああ、確かにあそこの水槽は見事だもんな。けどなあ、透があそこに行くのか…」
「なんだよ?俺が行くのが不服なのか?」
「だって、俺と(いずみ)が出逢った思い出の場所だからな。(けが)されたくない」
「はあー?なんで俺が行くと汚れるんだよ!この純真無垢なピュアボーイを捕まえて、なんてこと言うんだよ?」

すると吾郎が派手にコーヒーを吹き出す。

「ゴホッ、透!30のオッサンがよくそんなセリフ、恥ずかしげもなく言えるな?」
「オッサンじゃないもんね。吾郎と一緒にしないでくれよ」
「同い年だろうがよ!」

まあまあと、瞳子は苦笑いしながら手で遮る。

「透さん。Aqua Blue、とってもいいところですよ。ぜひ行ってみてくださいね」
「アリシアがそう言うなら、早速今夜行こうかな。君も一緒にどうだい?アリシア」

「行かねえっつーの!」

最後に大河の大声で話は終わった。
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