極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
「透さん、今日は本当にありがとうございました。私がお礼にごちそうするはずが、結局ランチもディナーもごちそうになってしまって、すみません」
「とんでもない。俺も由良ちゃんにコーヒーごちそうしてもらったよ」
「ふふっ、アメリカンコーヒー?」
「そう、アメリカンね…って、だからなんでそんなにアメリカンにこだわるの?」
「だって、透さんがアメリカンなんだもん」
「なんだよ、それ…」
「あはは!」

楽しそうに笑う由良に、ま、いいかと透は頬を緩める。

レストランを出る頃には、21時を過ぎていた。

「すっかり遅くなっちゃったね。1日振り回しちゃってごめん。疲れたでしょ?」
「ううん、とっても楽しかったです。それにちゃんとお昼寝もしたし」
「そうだったね。えらいえらい」
「透さん?!私、幼稚園児じゃありません!」
「ごめんごめん。あはは!」
「もう!謝まりながら笑うって?!」

もはやお決まりになりつつあるやり取りをしながら、二人はホテルのロビーに下りた。

「じゃあ、気をつけて帰ってね。今日はありがとう」

そう言って透は、エントランスの外に止まっていたタクシーの運転手にチケットを渡してから、由良を促す。

「透さん、どうして一緒にタクシー乗らないんですか?」
「ん?だって、女の子は住んでる場所をそう簡単に男に知られちゃいけないからさ」

すると由良は、へえーと感心する。

「なるほど。さすがはアメリカンジェントルマン」
「お?なんか格が上がった?」
「ふふ、透さんは最初からジェントルマンでしたよ」
「そうかな?」
「そうです。前に私、軽く見られがちってお話したでしょ?もっと酷いと、つき合ってしばらくしてから、遊びのつもりだったんだって振られたりするんです」
「ええー?!なんて酷いことを…」

透は思わず絶句する。

「だから私、透さんの優しさがすごく嬉しかったんです。今まで、下心ある人にしか優しくされたことなかったから」

そう言って微笑む由良は儚げで、透は思わず手を伸ばしそうになった。

「楽しい1日をありがとうございました。おやすみなさい、透さん」

にっこり笑ってから、由良はタクシーに乗り込む。

透は声をかけそびれ、小さくなるタクシーを呆然と見送っていた。
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