極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
「はあ…」

次の日も、オフィスの水槽を見ながら、カウンターでパソコン作業をしていた透がため息をつく。

じっと魚を見ている透に、大河はまた焦り始めた。

(やっぱりそうか。この間は、水槽越しに瞳子を見てはしゃいでたもんな)

「ひときわ可愛いお魚がいる…と思ったら、アリシアの綺麗な瞳だった。あはは!」
と笑っていた透を思い出す。

透も今、その時のことを思い出しているのかもしれない。

「あー、えっと、透。その、良かったら、これ…」

大河は立ち上がると、カウンターにお菓子のたくさん詰まった袋を置いた。

「ん?どうしたの?これ」
「いや、透が好きそうかなと思って」
「わざわざ買ってきてくれたの?なんで?」
「それは、その。元気になって欲しくて」
「ええー?!俺に?大河、どうしたんだよ。なんか変だぞ?」
「いや、変なのはお前だっつーの!」

二人のやり取りに、吾郎と洋平は眉間にしわを寄せて顔を見合わせる。

いつもの不毛な言い争いが戻ってきたのはいいが、どうにも調子が狂う。

「透、何でもいいから話してくれ。今考えてること、そのまましゃべってくれればいいからさ。俺はなんだって受け止める。うん。どんなお前の気持ちも受け止めるから。な?」
「うげ、なんか気持ち悪っ」
「なんだと?!」
「ええ?!考えてることそのまましゃべれって言うからしゃべったのに」
「あ、そうか。うん、分かった。俺の気持ち悪さも受け止める。他には何かあるか?」
「他にー?うーん、そうだな。傷ついた心を癒やすには、どうすればいいと思う?」

…………は?と、大河はしばらく固まったあと、あたふたとお菓子の袋を探る。

「透、チョコじゃだめか?やっぱりチョコなんかじゃ、癒やされないか?」
「ん?何言ってんの。傷ついてるのは俺じゃないよ」
「へ?じゃあ、誰なんだ?」
「まだ若い18歳の女の子」
「ええー?」
「あ、違った。22だった。また怒られちゃう。あはは!」
「あはは?」

大河はもう、何が何やら訳が分からない。

「あ!ミュージアムの内装業者と打ち合わせがあるんだった。行ってくる」

透は手早く準備をすると、
「行ってきまーす」
とオフィスを出て行った。
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