極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
第十章 お揃いの気持ち
6月の下旬。

ハルは主演ドラマが放送最終日を迎え、宣伝の為に朝からTVジャパンに来ていた。

朝7時代の情報番組から始まり、夕方までずっと局に缶詰めで、次々と生放送の番組に出演する。

「水曜ドラマ『悲しみの果て』いよいよ最終回です。本日夜9時スタート。驚きのラストシーンをどうぞお見逃しなく!」

朝から何度も繰り返している締めの言葉で、予定されていた全ての出演を終えた。

「お疲れ様でした。ありがとうございました」

ハルはスタッフに挨拶をしてから、控え室に戻って着替えた。

「ふう、疲れた…」

時計を見ると、18時半だった。

(倉木さん、今は夜の報道番組の準備してるのかな?)

ドレッサーで頬杖をつきながら、ぼんやりと考える。

同じ局に来ているだけでもドキドキだったが、廊下を歩く時には、倉木とすれ違わないかと1日中ソワソワしていた。

(報道のスタジオは多分この階だと思うけど、さすがにまだ入り時間には早いものね)

さてと、帰り支度をしようと、ハルはバッグに荷物を詰めていく。

(あれ?ハンカチ、どこに入れたっけ?)

サイドポケットに入れていた、倉木とお揃いのハンカチが見当たらない。

おかしいな、とゴソゴソ探るが、やはり見つからなかった。

(えっ、どうして?まさか、失くした?)

半泣きの表情で、必死に探す。
念の為、衣装のポケットも見たが、やはりない。

(待って、落ち着いて思い出して。えっと、今朝確かにカバンに入れたわよね。本番前に、お守り代わりにハンカチを握って、またカバンにしまって…。あ!ランチのあとにお手洗いに持って行ったんだった!)

急いでお手洗いまで見に行ってみるが、どんなにあちこち探しても見当たらなかった。

控え室に戻り、どうしようかと考える。

(大切なハンカチなのに…。落とし物で届けられてるかな?誰に聞けばいいんだろう)
< 39 / 54 >

この作品をシェア

pagetop