極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
第十一章 驚きの展開
7月に入り、アートプラネッツの夏のミュージアムも、いよいよオープン間近となった。

世間の注目度も高く、前売り券も飛ぶように売れる。

休日やお盆期間は混み合うことが予想され、インターネットからの事前予約制にしたが、あっという間に満席になった。

プレオープンまであと1週間と迫ったある日。
透は思い立って、由良にメールを送った。

『由良ちゃん、お久しぶりです。元気にしてますか?
実はアートプラネッツが手掛ける夏のミュージアムが、もうすぐオープンします。
そこで由良ちゃんにお願いがあるんだけど。
ひと足先にミュージアムを体験してもらって、感想を聞かせてもらえないかな?
ゲストの目線で意見を聞かせて欲しくて。
お仕事が忙しいと思うけど、もしご都合が合えばぜひお願いしたいです』

そう書きつつも、本当は由良の心を少しでも癒やしたかった。

一日一緒に過ごしたあの日の、別れ際の由良の言葉が忘れられず、透はずっと気になっていた。

(言葉で慰めるのではなく、彼女の心に寄り添いたい。俺が出来るのは、やっぱりこれしかない)

そう思い、由良がミュージアムに来てくれるようにと願った。

するとしばらくして、相変わらず丁寧な文面の返信があった。

『透さん、先日は何から何まで、本当にありがとうございました。とても楽しい一日でした。
アートプラネッツのミュージアム、私も以前からとても気になっていたんです。
瞳子さんも千秋さんも、すごく楽しいってお話してくれたので。
実は密かに、夏のミュージアムがオープンしたら、お邪魔するつもりでした。
せっかく透さんにお声掛けいただいたので、お言葉に甘えて、ひと足早く伺ってもいいでしょうか?』

読み終えると、透は頬を緩めてすぐに返事をした。

『もちろん!俺がVIP待遇でご案内します。いつがいいかな?』

『ふふっ、VIPなんて嬉しいです。明後日は仕事が夕方に終わるので、そのあとはどうでしょうか?』

『うん、大丈夫だよ。じゃあお仕事終わったら連絡くれる?迎えに行くから』

『はい、よろしくお願いします。わあ、楽しみ!』

俺も、と書いてから慌てて消して打ち直す。

(なんか下心あるみたいだもんな)

下心ある人にしか優しくされたことがない、と言っていた由良の言葉を思い出す。

(もちろん俺は下心なんてないぞ。ある訳がない。由良ちゃんに、ミュージアムの感想を聞きたいだけだ。そう、あくまで仕事の一環なんだ)

己にそう言い聞かせ、
『それじゃあ、明後日ね。よろしくお願いします』
とだけ書いて送信した。
< 42 / 54 >

この作品をシェア

pagetop