極上の彼女と最愛の彼 Vol.2 〜Special episode〜
「どうぞ、入って」
「はい、お邪魔します」

透が鍵を開けて誰もいない館内に案内すると、後ろをついてくる由良が感心したように話し出す。

「透さん、すごいね」
「ん?何が?」
「だって、こんなにすごいミュージアムの鍵を持ってるなんて。仕事が出来る男の人みたい」
「はいー?鍵を持ってると仕事が出来るの?かぎばあさんじゃないんだから」
「かぎばあさん!懐かしい。ね?かぎミソジイさん」
「ミソジイ?もはや30じゃなくておじいさんじゃない」
「そうだね。あはは!」

明るく笑っていた由良は、ミュージアムの入り口を入ると、途端に目を見開いた。

「わあ、すごい…」

圧倒されたように、言葉もなく立ち尽くす。
壁一面に湖が映し出され、足元にも同じように水面が広がっている。

「なんて綺麗なの…」

由良はそっと水面に足を踏み出してみた。
するとパァーッと水の輪が広がったかと思うと、美しい蓮が1輪花開いた。

もう一歩踏み出すと、次々と花が咲いていく。

「今回のミュージアムのテーマは『水面(みなも)に映る世界』。水面が映し出すのは、単なる鏡ではなく、夢やオアシス、理想郷なんかをイメージしてるんだ」
「そうなのね!もうまさに天国に来たみたい」

由良は両手を組み、うっとりしながら空間をぐるりと見渡した。

するとどこからともなく風が吹いてきて、由良の髪をふわりと揺らす。

水面から大きな木が天に向かって伸び、風に吹かれた葉っぱがそよぐ心地良い音がした。

水や木々の緑、そして花の香りがかすかに薫ってくる。

五感を刺激され、身体中で自然を感じ、由良はうっとりと空間に身を委ねていた。
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