甘々とロマンス中毒

AM7:47

AM7:45

人通りの多い交差点で、信号待ちをする眠たい春の朝。ぽかぽかとあったかい空気に包まれ、小さな欠伸を掌にのせた。

街頭ビジョンから流れるポップで可愛い曲は私のお気に入りの一曲。


「(駆け引きするのは嫌だから 今から恋を始めよう〜♩)」


ふふん、とご機嫌に心の中で歌っていたら、甘やかな低い声が私の鼓膜に触れてきた。

意識ごと奪われて、ゆっくり見上げると、アイドルのMVからファッションブランドの華やかなCMに切り替わっている。

瞳に捕まえたのは、人気急上昇中の若手俳優。
ドラマや映画、雑誌などで大活躍。女の子たちはみんな彼の虜だ。

その人は、頬杖をついて片足を自分の膝に置き、優しく目を細めながら笑った。一瞬で、こころが奪われる。ことことと鼓動が加速する。

お星様みたいに眩しくて、まるで王子さまみたい。……ううん、王子さまそのもの。

眠気も一気に吹き飛んじゃった。

わ…わぁあ…っ。わ〜〜っ、かっこいい……!

憂鬱な朝が幸せな朝に変わる。頬がこぼれ落ちそうに蕩ける。小テストも体育のバスケも、始めたばかりのバイトも頑張れる。

今日の私は無敵になったの。
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