甘々とロマンス中毒
「一緒に食う?」

頭の隅に浮かぶのは、買ったばかりの可愛いラッピングで包装したマドレーヌ。6つ作って渡したばかり。


「俺一人じゃ、食べきれないわ」


あやちゃんの声と、言葉の角を丸く縁取った口調には、柔らかさが含まれていて私は浮き足立つ。

羽が生えたみたいに軽い。
ふわわ〜〜って飛んじゃいそう。

眉尻を下げながら「えへ。ありがとー」と、言いたくなるのを喉の奥に閉じ込めた。頑なに結んだ口がむずむずする。

気を抜けば私の頬は今にも溢れ落ちそうで、むーと、も一度、結び直した。


「ありがとうございます」

控えめな返事は一咲流のお淑やかさです。

「アイスココア」

「……………?」

「あー…いや、前に一咲が甘いの好きだって言ってたの思い出してさ。コーヒーがいい?」

「ココアがいいです、飲みたいです。いただきます」

わぁあっ。私が好きな飲み物、覚えてくれてる。嬉しいな。

あやちゃんとの距離が僅かに近づいた。

「!(……っ、わわっ)」

こうやって、瞳ごと覗き込まれると、耳の裏まで真っ赤に染まってるであろう顔を、両手で覆いたくなる。

「じゃあ、クリーム付きな」

ふわり。あやちゃんから漂うローズマリーの香りが、私に溶け込んだ。

甘くて、くすぐったいのに、ちょっとだけくるしい。
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