甘々とロマンス中毒
あやちゃんが微笑むと、私の鼓動は甘やかな音を鳴らす仕組みになっている。今も、ことことと心地良いリズムが身体に刻まれる。

睫毛を上に向けて、あやちゃんを見た。


———てんぱりそうになったら、とりあえず上目遣いな


『好きな人の心臓を撃ち抜く方法』を早速、実践する。菖くんが教えてくれたの。

じいっと見つめて、ゆっくり瞬きするのがいいんだって。あやちゃんが顔をそらすか、笑えば私の“勝ち”らしい。

凛と落ち着いた面持ちの王子さまと、そんな王子さまの心を奪いたい私の睨めっこ。

「ん。どうした」と、不思議そうに眉根を寄せ、あやちゃんが尋ねる。

無言を貫く私に、あやちゃんの人差し指が、額を軽く突いた。「ひゃあっ」素っ頓狂な声が初夏の爽やかな部屋に転がる。

あやちゃんが、ははっと小さく笑った。

勝敗は1分も経たずに決まった。
もちろん負けたのは私。照れちゃったから。

ぽわ…と頬に甘い熱が溜まる。心臓がもたない。


『マドレーヌ食うだけだから、緊張しなくていいよ』

「………あやちゃん、何て言ったの?(心臓うるさすぎて、聞こえなかった)」

「んー?なんでもない」
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