甘々とロマンス中毒
はらはら流れる黒い前髪の隙間から、淡い眼差しの双眸が私を捕まえる。膝を立てたあやちゃんに「私もお手伝いします」と気がつけば、その背中を追いかけてキッチンに並んだの。

私がお皿にマドレーヌを置いてる間、あやちゃんはアイスココアを作ってくれる。グラスに氷が半分、ココアは並々に、クリームはたっぷりでとっても甘そう。

ココアのお礼に、私はアイスコーヒーを作った。

バニラアイスを添えたコーヒーフロート。残りのアイス半分は「一咲が食べな」と、あやちゃんが言ったので、ハーゲンダッツは私の口に食べられちゃった。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

準備ばっちり。
予想外の出来事もあったけど、後は食べてもらうだけになったマドレーヌをテーブルに置いた。

また、一つわかったこと。
あやちゃんは「いただきます」と、手を合わせる所作も上品だ。私も真似をする。

両手は膝の上で大人しく、一拍置いてから、ストローに口先をちょこんと付ける。不安を纏った頼りない視線だけが、あやちゃんを窺う。


「………(じー。あやちゃんの口に合うかな)」

今後の参考に聞いてみる?

「ん。うまい」

「ほんとですか?」

「うん。今まで食べた中でいちばん」

わ〜〜わ〜〜っ。やったぁ。

「わざわざ、ありがとな」


右手の甲で口元を押さえながらも「ふふ」と空気に溶ける、柔らかくて温かな気持ちは隠しきれない。ふわりと笑みが溢れる。
< 13 / 100 >

この作品をシェア

pagetop