甘々とロマンス中毒
「今度はあやちゃんの好きなもの、いっぱい作りますね」

……て、嬉しすぎて心の声が出ちゃった。

「いっぱい…?」

「独り言です」

『証拠隠滅』は大失敗だ。

「ごめんなさい。さっきのは忘れてほしいです。あやちゃんの…あやちゃんに…エ。……と、変な妄想してごめんなさいっ」


言い始めたら止まらないので困ってしまう。あたふたと、語尾が曖昧に、支離滅裂になっていく。

追い討ちをかけるように「へえ、どんな妄想してんの?」と、あやちゃんが意地悪に問うので言葉に詰まってしまった。

切れ長の瞳が悪戯っぽく輝いたのは気のせい?


「あの」

「いさく。こっち見て」


恥ずかしさを紛らわせるために膨らませた頬が萎む。泳ぎ続けて疲れた視線が、目の前にいるあやちゃんをなぞる。身体がぐっと近づいた。

肩が上擦ったのは一瞬で、しなやかな指先が唇の端に、微かに触れた。


「クリーム付いてる」

「〜〜〜っ」

顔、熱い…。それに今日の私、ダメなところばっかり見せてる。しんじゃいたい。

「……私ごと抹消したい」

「ぶっ飛んでんね」


消えそうな声で落ちた言葉も拾われてしまう。恥ずかしさと情けなさが相まって、しゅんと沈んでしまいそうになる。

「一咲」と、再び呼ばれ、俯き加減だった顔が持ち上がる。あやちゃんが、こう続けた。


「俺、ハンバーグが好き」

へ?

「オムライスとかグラタンも好きだな。好き嫌いないから、なんでも食べるよ」
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