甘々とロマンス中毒
「かっこいいね」

「ね、朝から見れて幸せ〜」

釘づけになってる私の隣で、他校の制服を着た女の子たちが嬉しそうにはしゃぐ。写真や動画を撮る人もいる。

私はもう一度、王子さまを瞳に映す。

蜂蜜色の艶やかな髪、涼しげな二重の黒い目。透き通った白い肌。すーっと通った高い鼻筋に、薄くて形のよい唇。身長はすらりとしていて骨格も完璧。

行き交う人たちを引きつける、美麗な顔立ちをした王子さま。

なんでこんなにかっこいいんだろう。

と、見惚れる私の背中にハリのある声がぶつかった。


「一般人に戻るのもったいないね。辞めてどうするんだろ」

「弁護士になるっぽいから学業優先でしょ。うちの大学通ってるしさ、もしかしたら会えるかもよ」

「え。そうなの!?」

「嘘!?知らなかったの!?めっちゃ有名な話なんだけど」

「法学部にそんなイケメンいた?あたし見たことないよ〜!」


私の頬に不満がぷくっと溜まった。

甘い熱に攫われて、持ち上げたスマホをポケットへ突っ込んだ。CMが終わった瞬間、別の誰かが残念そうに呟いた。


「あーあ。顔面国宝の見納めも今日までかぁ」

「しっかり目に焼き付けとこ」


映像の向こうの人、雪村(ゆきむら)あやみ。


私の幼なじみだ。
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