甘々とロマンス中毒
「えっ!?」
「…は?」

視界に映るのは、懐かしい顔と昨日ぶりに会う顔。それぞれが素っ頓狂な声を揃えた。

一人は、清潔感のあるグレーのスーツを着た“元”マネージャー。猫目の瞳が揺蕩い、茶髪のボブが肩口で揺らめいている。

彼女が驚いているのは確かで。ぽかんと開いた口が一向に閉じないから。

もう一人、大学の友人である伊吹(いぶき)は、切れ長の瞳を細めた。「うわぁ。最悪」と溢して、端正な顔に艶のある笑みを浮かべる。

いや、こっちが最悪。一番見られたくないお前に見られたからな。そのまま返すわ。


「修羅場は聞いてないんだけど」


哀れむ言葉とは裏腹に、ふっと口角を緩める表情は、どこか愉しげだ。伊吹が両手を組んで首を傾げると、後ろで束ねた青みがかる黒髪が鎖骨を滑る。

右手に、コンビニ袋を下げているのが目に留まった。


「あなた、誰!?(もしかしなくても彼女?すっごく可愛い。()きゅるきゅる、肌真っ白、顔も小さいし。てか制服着てるんですけど!?高校生?なんか、なんか………子ウサギみたい)」

「(わぁあ…。あやちゃんのカノジョ…?)」

つか、アンタはなんの用だよ。

「……なに?」


伸びた前髪をくしゃと掻いた。ため息を僅かに含めて、突き放すように尋ねる。
“元”マネージャーは、あっけらかんと続けた。


「あっ!さっきメッセ送ったんですけど、あやみくん見てなかったですよね。昨日、連絡したやつ持ってきました」
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