甘々とロマンス中毒
「ん。こんばんは、バイトお疲れ」

『ありがとー。無事に帰って来ました』

「どこで働いてんの?」

櫻都(おうと)駅前の書店だよ』

一咲が言うのは、一年前にできた大型書店。隣に直営のラウンジがあって、読書だけでなく勉強や仕事もできるので、利用者が多く予約制になっている。

俺も仕事の合間、大学の勉強をするのに利用していた。今も、課題が進まないときや、Web授業のある日は使っていて、飲食もできるし何かと便利だ。……まさか、一咲がバイトしてるとは思っていなかったけど。


「ああ。あそこに行ってんだ。ラウンジよく使ってる」

『そうなの!?』

んな、驚かなくても。


電話の向こう側、一咲がひゃあ、とか、わぁあっと、ささやかに声を上げる。

悪戯心がくすぐられた。


「さっきも行ってたから、会ってたかも。つか、一咲のこと見た気がするわ」

『あ…えーと。あやちゃん、来てたの…?(レジしてたの見られた?まだ、上達途中なのに)』

「ふ、じょーだん。」

『かっ、揶揄わないで〜…っ』

「行ってたのはほんとだけど、一咲のことは見てないよ」

『…………(良かったぁ)』

「次は会えたらいいな」

『ウ、ウンッ…!(ヨシ。あやちゃんが来るまでに、もっと頑張って上手になろう…!)』
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