甘々とロマンス中毒
𓂃❁⃘𓈒𓏸

一咲便はあの日以来、来ていない。

前期テストの勉強に加えて、元マネージャーの非常識な行動を事務所に報告したりと忙しく、まだ呼べないでいる。

いつでも呼んでくださいと、照れた頬を輝かせるあの子の顔が、寝起きの脳裏を過った。

———もう、一週間前になるのか

欠伸を噛みながら、気怠い身体を起こす。
スマホのアラームが午前6時を告げる。

開きっぱなしのトークルームに視線を落として、メッセージを送った。

《ごめん、寝てた おはよ》

秒でついた既読に「はや」と投げた。

《おはよう!ううん、大丈夫です!》
《私も寝ちゃってた〜》

涙目で訴える、ちいかわのスタンプが届く。

《あやちゃん早起きなんだね》

続けて、フ!と笑うちいかわ。

《一咲もね》

︎︎𓂃⟡.·

「おせーよ」

広々とした学生ラウンジ後方、窓際の席で信玄(しんげん)が軽く手を挙げた。

机に荷物を置き、信玄の前に腰掛けた。パソコンを立ち上げて、民法の教科書を引っ張り出す。

課題の進捗がいまひとつなので、気分転換に大学へ来たのはいいが、昼休み直後のラウンジは思ったより混んでいる。

家に居れば良かったと内心、ため息をついた。

櫻都の書店…は、一咲がいないので行く必要ないんだよな。昨日のLINEによると、次のバイトは週末らしい。

1つ聞けば、10も返してくれる一咲を申し訳なく思う半面、その健気さがかわいらしくて困る。
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