甘々とロマンス中毒
左端に一咲、隣に爽やかクン、その隣はハーフツインの女子、三人の一歩後ろに下がった位置にはそっぽを向く菖がもれなくいる。

薄い化粧をして、はにかみながら眉尻を垂らす一咲を目に留めると、唇の端が吊り上がり眉根が寄る。

「(…仲良いんだ)」

清涼感たっぷりの爽やかクンと肩くっつきそうじゃん。

「(髪も、いつ染めたんだろ)」

落ち着いたチョコレートブラウンが、透明感のあるピンクがかったブラウンになっている。

一昨日の電話で『あやちゃんを驚かせたいことがあるの』と、嬉しそうに話す一咲を思い出した。

『んー、なんだろ。…なに?』さりげなく尋ねてみたが『ふふ、ないしょ〜。だからね、あの…《《%size:10px|はやく、一咲便呼んでほしい…》》です』と、はぐらかされて。

あの、の後に紡がれた言葉が聞き取れず、もいっかい教えて?と、頼んだら、ひゃあとかきゃあとかわいらしい声を発しながら、最後は口を噤んだんだっけ。

ストーリーに投稿された写真を見る限り『驚かせたいこと』=『髪を染めた』なのだろうか。

一咲、髪、たまに脳裏をちらつく爽やかクン。

頬杖をついて、取り留めもない考えにふけていると、前のめりに身を乗り出した信玄が何かに気づいて俺に告げた。


「後輩が櫻都の書店でバイトしてんだけど、最近可愛い子が入って来たって言ってて…あー……。この子だわ」

「よくわかるね」

伊吹が必要以上に会話を広げる。

「先週、彼女と行ったときにレジしてくれたんだよ。幼なじみだったんだ。(あいつ可哀想に)」

「………なにそれ」

「信玄はナチュラルに煽るの上手だね」
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