甘々とロマンス中毒
わっ、いけない。考え事しすぎた…!
アナウンスに肩が跳ねる。急いでリュックを背負い立ち上がった。
「あ…(おり、降ります)」
と言わずとも、ぎゅうぎゅう挟まれるから足が自然と一歩も二歩も進む。背中を押されて息も苦しい。むぎゅ。
更に人圧がかかり、勢いよくホームに投げ出された。体が揺れて、プシュー…とドアが閉まって。
「きゃっ」
通勤通学ラッシュ。人で溢れかえる構内で盛大な前のめりを披露する寸前、誰かに腕を引っ張られた。ふわっと足が宙に浮くの。
「あっぶな」
やけに焦った声が耳元を掠める。
その人は「さく」と吐息混じりに言った。スニーカーが地面に着いたのと同時に、顔をゆっくり持ち上げた。
ぱち、ぱち。炭酸が弾けるような瞬きを二回。
彼はイヤホンを耳から外して、未だ放心状態の私に告げた。
「気をつけなよ」
こちら、ラーメン替え玉券三枚で私に買収された菖くんです。(訳:一咲便をお届けするため、スマホを拝借したり、住所を教えてもらいました)
「ありがとー、菖くん。おはよう」
「おはよ」
挨拶も手短に、菖くんが視線を別の方向に泳がせる。私も続けた。追いかけた先にいるのは、改札を通るタトゥーの男性だ。
「あの人、兄貴じゃないよ」
「後ろ姿が似てるなって思っただけで、あやちゃんじゃないのわかってるもん」
「めちゃくちゃ見てたじゃん」
アナウンスに肩が跳ねる。急いでリュックを背負い立ち上がった。
「あ…(おり、降ります)」
と言わずとも、ぎゅうぎゅう挟まれるから足が自然と一歩も二歩も進む。背中を押されて息も苦しい。むぎゅ。
更に人圧がかかり、勢いよくホームに投げ出された。体が揺れて、プシュー…とドアが閉まって。
「きゃっ」
通勤通学ラッシュ。人で溢れかえる構内で盛大な前のめりを披露する寸前、誰かに腕を引っ張られた。ふわっと足が宙に浮くの。
「あっぶな」
やけに焦った声が耳元を掠める。
その人は「さく」と吐息混じりに言った。スニーカーが地面に着いたのと同時に、顔をゆっくり持ち上げた。
ぱち、ぱち。炭酸が弾けるような瞬きを二回。
彼はイヤホンを耳から外して、未だ放心状態の私に告げた。
「気をつけなよ」
こちら、ラーメン替え玉券三枚で私に買収された菖くんです。(訳:一咲便をお届けするため、スマホを拝借したり、住所を教えてもらいました)
「ありがとー、菖くん。おはよう」
「おはよ」
挨拶も手短に、菖くんが視線を別の方向に泳がせる。私も続けた。追いかけた先にいるのは、改札を通るタトゥーの男性だ。
「あの人、兄貴じゃないよ」
「後ろ姿が似てるなって思っただけで、あやちゃんじゃないのわかってるもん」
「めちゃくちゃ見てたじゃん」