甘々とロマンス中毒

もう、王子さまはいらない

7月下旬。夏真っ盛り。

あやちゃんと《おはよう・おやすみ》の言葉を交わさないLINEを続ける毎日は、甘いお砂糖をまぶした幸せの過剰摂取。

高校一年生の夏休みは、始まったばかりです。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

「(リップ良し、前髪のふわふわは完璧…!新調したチェックスカートも可愛い。……けど、オフショルダーのリボンブラウスとの組み合わせは、甘々すぎるかも。それに、肩出しすぎ…た?)」

今日の私、ヘンじゃないかなぁ。

浮かれすぎて「この日は晩ご飯食べて帰るね」って、3日も前からずうっと、ママの耳にタコができるほど言ってたの。

今朝、仕事に向かうママに「デート楽しんできてね」そう言われたんだけど、これって“デート”なの?

だってね、一咲便は、あやちゃんのQOLを上げるためにあるんだよ———…?

こと。首を小さく傾けた。


待ち遠しかった、あやちゃんとの約束を迎えたバイト終わりの夜。大通りのビル街をせっせと歩く私。煌めくネオンが夜空の星に重なる。

予定より早めに着いた私は、あやちゃんが来るまで雑貨店で可愛いシールやマステを眺めたり、香水を手の甲に付けてみたり、平常な行動とは裏腹に心はばくばくと煩くて。

掌で鳴っていたスマホに気づいたのは、二回目の通知音のときだった。


《着いた》
《いさく、どこ?》

!?ひゃっ!あやちゃんっ。

《お花屋さんの前だよ🌷🫧》

既読がぽこんと浮かんだ。
あやちゃんからの返信が秒速で届く。

《わかった》

次がやって来る。

《あ、一咲見つけた》

エッ。あやちゃん、どこ?

ぐるり、辺りを見渡す。王子さまの姿なし。視線を左右に動かした。やっぱり、あやちゃんはいないの。どうして?疑問と不安に包まれる。今度は後ろを向いた。そうしたら…


「一咲」

大好きな人の声が、背中に触れた。

「お待たせ」
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