きっと消えない秋のせい

◆第ニ章 虹恋、きみと紡ぐ時間

そんな想いで迎えた日曜日。
あたしは玄関の前で、外を見つめて立ち尽くしていた。

……大雨。

天気予報では晴れだったのに、ザー……と雨がしきりに降っている。
辺りは霧がかかったみたいに曇っていて、あたしは目を細めた。
……こんな雨の中、バス停まで歩いたら、傘をさしていてもびしょ濡れになってしまう。
久しぶりに考人と一緒に出かける日に限って、大雨。
ついてないっていうか、ため息が出るんだけど……。

「こりゃ、止みそうもないぞ。杏、別の日に変えた方がいいんじゃないか?」

お父さんも困った表情で、玄関の前で立ち止まっている。
うーん。どーにかしないと、せっかくのお出かけが台無しになっちゃう。仕方ない。

『お願い、今すぐ雨が止みますように!』

あたしは手をぱんぱんと叩いて、心の中で強く祈ったんだ。
すると、先程までの大雨が嘘のように、ぴたりと止んだ。

大成功ー!

やがて、陽射しが出てきて、優しい風が顔に当たる。

……気持ちいいな。
秋のぬくもりだ。

あんなに土砂降りだった雨が止んで、澄んだ匂いがする。
……雨の匂いは優しくて、どんな嫌なことも、忘れられる気がした。

「ふふん。もし、あたしが『お天気キャスター』になったら、必ずお天気が当たるって有名になるかも」

あ、お天気キャスターっていうのはね、お天気の情報をみんなに伝える仕事なんだ。
お天気キャスターのお父さんは、いつもテレビでみんなにお天気の情報を伝えている。
テレビの中のお父さんはかっこよくて、あたしもいつか、お天気キャスターになりたいって思っているんだ。
そんな憧れのお父さんが不安そうにあたしの頭を撫でる。

「杏。傘、持たなくて大丈夫か?」
「大丈夫! じゃあ、行ってきまーす!」

慌ただしいお父さんの声を置き去りにして、あたしは元気よく外に出た。
< 13 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop