きっと消えない秋のせい


でも、遊園地の近くのバス停に降りても、雨は降り続いていたんだ。
遊園地前のバス停の屋根は小さい。ときおり、考人の肩に当たるのをドキリと感じる。

近い……。
考人との距離が近い。

わたわたと焦っても、雨はいっこうに止む気配はない。

えーい。傘があるから大丈夫。

……と思ったけど、この大雨じゃ傘をさしてもきっと、びしょ濡れになってしまう。

「雨がぜんぜん止まないー。こうなったらー!」

あたしは考人の横に立って、遊園地までの距離を見つめる。
黙ってその様子を見ていた考人に、あたしは言った。

「考人、お願いごとをしたら、すぐにチケット売り場まで走ろ!」
「……別にいいけど」

ザー……という雨音だけが、あたしと考人の周りを包んでいる。

『もう一度、お願い。今すぐ雨が止みますように!』

あたしは再び、手をぱんぱんと叩いて、心の中で強く祈った。
降り続いていた雨が嘘のようにぴたりと止んだその瞬間――。

「杏」
「え……?」

考人があたしの腕をつかむ。
そして、戸惑うあたしの手を引っ張り、一気に走り出したんだ。
考人の方が走るのは速いけど、今はあたしにペースを合わせてくれる。

「おーい! 二人とも慌てなくても、遊園地は逃げないんだぞ!」

一人置いてきぼりを食らったお父さんも慌てて、追いかけてきた。
みんなで走っていると、屋根のあるチケット売り場が見えてくる。
……もうすぐだ。

「はあはあ、着いた……」

あたしたちが何とかチケット売り場にたどり着いたその途端。

ザー……。

視界が見えなくなるほど、雨がまた激しくなっていく。
恐らく、今日のニュースは不思議なお天気で持ちきりだろう。
でも、一体、誰があたしのお願いごとを邪魔しているのかな?
あたしは周辺を流し見るようにして確認する。
視線を巡らせても、それらしき存在は見当たらない。
不気味な静寂だけがあたしたちを包んでいた。
また、邪魔してくるかも。
だけど、遊園地は屋根つきの通路があるので大丈夫。
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