きっと消えない秋のせい
「そういえば、考人。最近、考人のお父さんは忙しいの? いつも家にいないみたいだから」
「……うん。忙しいみたい」
「そっか」

考人のお父さんは仕事が忙しくて、家にいない時が多い。
だから、考人はいつも少し寂しそうにしていたっけ。
あたしはぐいと身を乗り出すと、お父さんに聞こえないように小さな声でささやいた。

「……ねえ、考人。教えてほしいことがあるの」
「……なに?」
「どうして今まであたしのこと、避けていたの?」

核心に迫るその問いに、考人の瞳が揺れる。

「お願い、考人。ほんとのことを教えて」

思わず声が高くなる。
そんなあたしの気持ちを汲み取ったのか、考人は苦い顔で応えた。

「……真実を知られたくなかったから」

こぼれ落ちた言葉は、切なさを帯びてあたしの耳に届いたんだ。

「真実。それって、考人たちは性格が変わってしまった理由を知っているってことだよね?」

あたしは気まずい表情の考人をまじまじと見つめる。
言いたくなさそう。
でも、少しずつあたしの心をむしばむ寒さは、真実という温かさを求めた。

「お願い、教えて。あの時、何があったの?」
「……ごめん。言えないんだ。この秘密は誰にも話していけない。僕たちはそう言われているんだ」

考人たちは誰かから口止めされてる。
その事実に、あたしは胸が張り裂けそうに痛んだ。
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