きっと消えない秋のせい

◆第三章 引き裂かれる運命

あたしは絵を描くことが好きだ。
絵を描いていると、自分の紡ぎ出すキャラクターたちが魔法のように動き始めるような予感がする。
満ち足りた気持ち。この時間がとても好きだ。

幼稚園の頃から、あたしと考人はいつも一緒にいた。
あそぶのも一緒。
ごはんの時間も一緒。
おひるねの時間も一緒。
そして……あたしは机の上のお絵かき帳をばさりと広げる。

「考人、お絵かき、しよ!」
「おう!」

体を動かすことが好きだった考人だけど、あたしの好きなお絵かきも一緒にしてくれたんだ。
お母さんが買ってくれたお絵かきアイテム。水で消せる魔法のクレヨンを手に取る。
ふわりと絵を描くと、優しくて温かい世界に入りこむことができた。
綺麗なお姫様やおしゃべりする猫さん、動くカボチャに魔法使いの女の子。
それらをごちゃまぜにして、あたしは次々と描いていく。

「杏、すげえじゃん!」
「えへへ!」

考人にほめられると嬉しい。
そこで、あたしはふと、視線が注がれていることに気づく。

「あれ?」

お絵かきで遊んでいる途中で誰かと目が合った。
ふわっとカールした、さらさらの髪。大きな目。
透明感のある綺麗な瞳が、あたしたちをまっすぐに見ていた。
見とれるほど、整った顔。
同じ年くらいの男の子は不思議な雰囲気をかもしだしている。
まるで物語から出てきた王子様のように見えて。

「…………」

あたしが目を向けた途端、彼の表情が気まずそうにゆがんだ。
気づかれたことに焦っているみたい。

「あの男の子は……」

あたしはポカンと口を開いた。
彼は、いつもみんなとは少し離れた場所にいる男の子だったからだ。
自分から声をかけることはほとんどない。
何故かは分からない。
けど、みんなの輪に入ることをためらっている……そんな感じがしたんだ。

どうしてなのかな?

寂しげな表情を浮かべる、あの男の子のことがもっと知りたくて。
あたしはお絵かき帳とクレヨンを持って、男の子のもとに駆け寄った。

「一緒にお絵かきしよ?」

あたしの誘いに、少し間を置いた後……。
男の子がやわらかく微笑む。

その微笑みはまるで……。
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