きっと消えない秋のせい
「考人は行かなくていいの?」
「……今日は練習スペースがないみたいだから、かわりばんこ」
「そっか」

あたしは「なるほど」と、ぶっきらぼうに答えた考人を見た。
ふと視線を巡らせると、他にも何人かの人たちが練習風景を眺めている。
通谷くんたちが本格的な練習を始める中。
あたしは体育館の外で、考人と一緒にそれを眺めていたんだ。
だけど……。

「……杏!」
「……うわわ!」

考人の声とともに、勢いをつけてバスケットボールがあたしに向かってきたんだ。

――わわっ、速い。避けられない。
当たる。

あたしは思わず、目を閉じる。
でも、いつまで経っても衝撃はこない。

あれ……?

おそるおそる目を開けると、視界は一変していた。
目の前には考人の背中。
考人があたしに向かっていたボールを受け止めてくれたんだ。

「考人、片岡、悪いー!!」

声は通谷くんだ。
どうもバスケに熱が入り過ぎて、ボールが体育館の外まで飛んでしまったらしい。
考人は相変わらずの不愛想な表情のまま、あたしの方に視線を寄こしてきた。

「杏、大丈夫?」
「……うん。考人、ありがとう」

その言葉に、考人はほっとしたように息を吐いた。
でも、あたしはかあっーと顔を赤らめる。
だって、あたしを助けてくれた時の考人がかっこよかったから。
きっと今、あたしの胸は複雑な感情で壊れそうなくらいに高鳴っている。

「ごめんなー!」
「すまん、すまん! 二人とも、大丈夫だったか?」

走ってきた通谷くんと小林先生が、あたしたちの方に近づいてきた。

「お、深瀬。俺がおまえたちをもっと輝かせてやる」

考人を見るなり、小林先生は熱く語り出してきた。

「深瀬と通谷。おまえたちがいれば、今度の大会、絶対におもしろいプレーが見れるぞ!」
「その、今日は練習スペースがないので……」

その言葉に、考人は嫌そうな顔をしていたけど。
考人と通谷くん。
この二人がいれば、確かにおもしろいかも。
あたしはひそかにそう思ったんだ。
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