きっと消えない秋のせい
あまりにも、みんながお願いごとを叶えてくれたり、天気が突然変わるので……。
不思議に思ったあたしは思いきって、そのことをみんなに話したんだ。
だけど、誰も信じてくれなかった。
でも、ただ一人、あたしの話を真剣に聞いてくれた男の子がいたんだ。

深瀬(ふかせ)孝人(たかと)
隣の家に住んでいる大好きな男の子。
かっこいいだけでなく、運動も得意で、クラスの中で誰よりも足が速いというのも魅力の一つ。
運動会は「全てのヒーローになりたいから」って言って、いろんな種目に出るたびに大活躍。
性格は明るくて元気いっぱいで。
しかも気さくで話しやすいから、男子にも女子にも人気があったんだ。
そんな男の子にふわふわと空気のようにまとわりつくことができるのは幼なじみの特権。

いつも一緒。

そんなあたしたちは『おしどり夫婦』だなんて呼ばれていた。
そう言われるようになったきっかけも結構、軽かった気がする。
事の成り行きで何となく。そんなふんわりとした雰囲気だった。
ある日、一緒に登校してきたあたしたちを、クラスのみんながはやしたてたのだ。

「相変わらず、仲がいいよな!」
「おしどり夫婦、あんまり見せつけんなよ!」

ざわめく教室。その輪の中心にいたのは、あたしと考人だった。
いつもラブラブなお父さんとお母さんは、授業参観の時も、他の人たちからよく「おしどり夫婦ね」って言われていた。
だから、そうはやしたてたのもしれない。

「あたしたち、おしどり夫婦だって。みんな、言ってるよ」
「いいじゃん。俺たち、おしどり夫婦で!」
「でも、おしどり夫婦って、仲がいい夫婦のことだって、お母さんが言ってたよ」
「おもしれー! だったら、俺たちは今日から仲がいい夫婦ってことだなー!」

あたしが戸惑っていると、ひときわ元気がいい考人が手を上げた。
まるで太陽のような笑顔。
考人がいると、あたしは思わず笑顔になる。
いつも名前で呼び合って、傍にいることが当たり前で。
だから、いつか考人があたしから離れていくなんて考えもしなかったんだ。
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