きっと消えない秋のせい
*
大会の練習が終わった後。
「考人。大切な話、別の場所で話してもいい?」
「……別にいいけど」
あたしがそう提案したことで、校舎裏に移動することになったんだ。
なにしろ校舎裏は内緒話に適している、学校の秘密基地の一つだもんね。
「あのね、考人。どうしても聞きたいことがあるの」
「……なに?」
無表情を変えることなく、考人は静かに尋ねる。
「……お願いごとの力のことなの」
「お願いごと?」
考人の前で、あたしは強くうなずく。
「あたし、思ったの。もしかしたら、他にもあたしと同じような力を持った人がいるんじゃないかって」
あたしは核心に迫る疑問を投げかけた。
「その人がお願いごとをしたことで、考人たちは変わってしまったんじゃないかな?」
考人はポカンとしながら、あたしを見つめる。
「遊園地に行った日、あたしのお願いごとを邪魔したのも、その人かもしれない」
「ほんとに杏と同じような力を持った人がいるの?」
考人の疑問はもっともだと思う。
だって、ぜんぶ、あたしの予想だもん。
「うーん」
あたしは視線を上に向けて思案する。
でも、いくら考えても分からない。
ううん、答えなんていらないんだと思う。
「分からない。でも、あたしの勘では、きっといると思う」
そんな言葉があたしの口からこぼれていた。
そこに理由なんて必要ない。
「もしかしたら、あの事故に関わっている人。
考人たちに性格が変わってしまった理由——あの事故の『真実』を口止めしている人かもしれない」
ふと思いついたことを言ってみる。
思わぬ言葉に考人の顔が驚きに染まった。
「考人はどう思う?」
「僕も分からない。でも、その可能性はある……と思う」
何かを思い出しながら、考人は言った。
「僕たちの知らないことも知ってるような感じがしたから」
「……そっか」
あの事故の真相に繋がる答え。
出てきた答えは笑ってしまうくらい曖昧で、でも揺るぎない。
……結菜は、『あなたのせいで事実が発覚したら、とばっちりを食うのはわたしたちなんだから』と言っていたけど。
それを恐れていると思ったのは、きっと気のせいじゃない。
青を失った空が、あたしの表情に影を落とす。
夕暮れ空の淡い色を見て、なんて寂しい色なんだろうと思った。
いつか考人の口から全てを知りたいな。
その遠くを見つめる瞳も。
ひとりで抱えている過去も。
ぜんぶぜんぶ受け止めてあげられるぐらい、あたしも強い人になりたいと思ったんだ。
考人が一歩、校門の方へ踏み出すまで。
あたしはずっと、考人の隣で、そんな空を眺めていた。
背後であたしたちを見つめている気配に、全く気づかずに……。
大会の練習が終わった後。
「考人。大切な話、別の場所で話してもいい?」
「……別にいいけど」
あたしがそう提案したことで、校舎裏に移動することになったんだ。
なにしろ校舎裏は内緒話に適している、学校の秘密基地の一つだもんね。
「あのね、考人。どうしても聞きたいことがあるの」
「……なに?」
無表情を変えることなく、考人は静かに尋ねる。
「……お願いごとの力のことなの」
「お願いごと?」
考人の前で、あたしは強くうなずく。
「あたし、思ったの。もしかしたら、他にもあたしと同じような力を持った人がいるんじゃないかって」
あたしは核心に迫る疑問を投げかけた。
「その人がお願いごとをしたことで、考人たちは変わってしまったんじゃないかな?」
考人はポカンとしながら、あたしを見つめる。
「遊園地に行った日、あたしのお願いごとを邪魔したのも、その人かもしれない」
「ほんとに杏と同じような力を持った人がいるの?」
考人の疑問はもっともだと思う。
だって、ぜんぶ、あたしの予想だもん。
「うーん」
あたしは視線を上に向けて思案する。
でも、いくら考えても分からない。
ううん、答えなんていらないんだと思う。
「分からない。でも、あたしの勘では、きっといると思う」
そんな言葉があたしの口からこぼれていた。
そこに理由なんて必要ない。
「もしかしたら、あの事故に関わっている人。
考人たちに性格が変わってしまった理由——あの事故の『真実』を口止めしている人かもしれない」
ふと思いついたことを言ってみる。
思わぬ言葉に考人の顔が驚きに染まった。
「考人はどう思う?」
「僕も分からない。でも、その可能性はある……と思う」
何かを思い出しながら、考人は言った。
「僕たちの知らないことも知ってるような感じがしたから」
「……そっか」
あの事故の真相に繋がる答え。
出てきた答えは笑ってしまうくらい曖昧で、でも揺るぎない。
……結菜は、『あなたのせいで事実が発覚したら、とばっちりを食うのはわたしたちなんだから』と言っていたけど。
それを恐れていると思ったのは、きっと気のせいじゃない。
青を失った空が、あたしの表情に影を落とす。
夕暮れ空の淡い色を見て、なんて寂しい色なんだろうと思った。
いつか考人の口から全てを知りたいな。
その遠くを見つめる瞳も。
ひとりで抱えている過去も。
ぜんぶぜんぶ受け止めてあげられるぐらい、あたしも強い人になりたいと思ったんだ。
考人が一歩、校門の方へ踏み出すまで。
あたしはずっと、考人の隣で、そんな空を眺めていた。
背後であたしたちを見つめている気配に、全く気づかずに……。