きっと消えない秋のせい
「もしかして、お願いごと?」
「うん。これからも考人と結菜のそばにいたいから」
「……ふーん。ほんと、杏のお願いごとは無限大だな」

あたしははにかむ。
その微笑みには嬉しさも交ざっていたんだ。
えへへ。
嫌なことがあっても、考人の顔を見るだけで、心が浄化されそうな気がする。

「ほんとに杏と同じような力を持った人がいるみたいだ。もしかしたら他の人たちもお願いごとされているかもしれない」
「そうだね。あたしのお願いごとは近くにいる人だけだから、気をつけないと」

考人の静かな声が、あたしにとって受け入れがたい事実を突きつけてくる。
クラスのみんなや先生たち、それにお父さんとお母さんたちも、お願いごとの影響を受けているかもしれない。
何とかしないと。

「あ、そうだ!」

考人はあの事故の『真実』を口止めしている人について知っていた……!

なら……いや、待て待て。
もう一度、聞いても教えてくれないような気がする。
そういえば、考人はたまに、一人でふらりとどこかに出かけてしまうことがあるって聞いた。
もしかしたら、その人のところに行っているのかも。
でも、考人の後を追いかけても、きっとすぐに気づかれてしまう。

どうしたら……。

あたしは答えの出ない疑問に頭を悩ませていたけど。
でもでも、そこであることに気づいたんだ。
謎を解くための大発見ー!!

……そうだ。結菜なら、何か知っているかも。

あたしは確信を持って、その可能性を受け入れていた。
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