きっと消えない秋のせい
昼休み。教室で考人と一緒に給食を食べていると……。

「ほらほら、結菜」
「片岡さんと仲直りしよー」
「ちょっと!」

結菜が仲のいい友達に背中を押されて、あたしの席まで来た。

「結菜……」

ふと、手が止まった。
お願いごとの力なのか。
結菜の友達が仲違いしているあたしたちを見かねて後押ししてくれたんだ。

「結菜、あのね……放課後、話したいことがあるの」
「片岡さん。悪いけど、わたしはあなたと話すことはないから」

ほぼ同時に、あたしと結菜は言葉を発した。
以前ならお互い譲り合っていたけど、今はお互いに譲るつもりはない。

「お願い! どうしても、聞きたいことがあるの。大事な話なの!」
「そんなの、わたしには関係ないわね」

結菜はあっさりと会話を切り上げる。
そのまま、踵を返し、その場から立ち去ろうとした。

「待って、結菜!」

あたしは慌ててその背中に声をかける。

「今もイラストを描いているの?」
「……描いているけど。それがなに?」

あたしの質問に、振り返った結菜は冷ややかな視線を向けてきた。

「お願い! イラスト、見せて!」
「何で、あなたに見せなくちゃいけないのよ!」
「結菜のイラストを見たいから。結菜のイラストが大好きだから、見たいの!」

わわっ。なんだろう、この感じ。
結菜と、こんなに言い合ったやりとりは久しぶりだ。
まるでイラストのことで、意気投合した時のような。
知り合ったばかりの頃みたい。 

「結菜、言ってたよね。いつか、あすかみのり先生みたいな……素敵なイラストレーターになりたい……って。あたしは結菜の夢を応援したい」
「……そんなの、とっくになれているわよ」

結菜は怒りよりも、深い悲しみを含んだ目であたしを見つめた。

「えっ? それって、どういう――」

そこまで言いかけたところで結菜の声が重なる。

「わたしはわたしの夢をもう一度、叶えるわ! その夢に、あなたは必要ない!」

はっきりと口にして、結菜は何かの衝動に突き動かされるように踵を返し去っていった。
結菜の友達が「ごめんね」と謝罪してから、慌てて結菜のもとに駆け寄っていく。

結菜……。

かたくなな態度に、あたしは肩を落とすしかなかった。
どうしたら、結菜と以前のように笑い合えるんだろう。
悲しいし。悔しいし。やるせないよ。
行き場のない気持ちが体中を巡る。

「杏。僕は……」

そんなあたしたちの姿を前に、考人はどこか思い詰めた表情を浮かべていた。
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