きっと消えない秋のせい


「また明日、学校で元気に挨拶できるように、早めに寝て、ゆっくり休んでくださいね」

スタンプラリーのイベントが終わった後。
あたしたちは広場に集まって、先生の話を聞いていた。
帰りもバスに乗って、赤坂小学校に戻ることになる。
先生の話が終わった後、あたしたちはそのままバスに乗り込む。
あたしは行きのバスと同じように、考人の隣の席に座る。

「考人。遠足が終わったら、いよいよ5年生クラス対抗バスケットボール大会だね」
「……そうだね」

考人はいつもどおりの素っ気ない対応。
でも、あたしにとっては温かくて、見ているだけで幸せになる存在だ。

「今日は学校に着いたら、そのまま家に帰ることになるけど。明日からは、バスケの練習があるんだよね」

わくわくする気持ちを押さえきれず、あたしは声を弾ませた。
学校に着くまでの間に、あたしたちは5年生クラス対抗バスケットボール大会の件を踏まえながら話していく。

「考人、今回のスタンプラリーのイベント、隣のクラスの人たちが一番だったよね。隣のクラスの人たちって強いの?」
「……隣のクラスにバスケが上手い転校生がきたって噂があった。多分、僕たちよりも強い人がいるかも」
「そっか。かなり手強そうだね」

初耳ばかりの告白に、あたしは驚きに目を見開いた。

「今回、一番だった班の人たちの中にいたのかな」

あたしは窓に目を向けて、考えるような仕草をした。
まだ、遠足の帰りなのに、5年生クラス対抗バスケットボール大会の時のことばかり考えてしまう。
やがて、バスは赤坂小学校に着いた。
先生から話があった後、そのまま、家に帰ることになる。

「じゃあ、考人、片岡、また明日な!」
「深瀬くん、片岡さん、またね」
「うん」

通谷くんと高柳さんは途中まで一緒だったけど、やがて、自分たちの家に帰っていった。
心が浮き立つような夕焼けを眺めながら。
あたしはてくてくと考人と一緒に家まで歩いていく。

「考人、来年の遠足も楽しみだね。来年の遠足では、スタンプラリーのイベントで一番になりたいな」
「……来年は多分、別の場所に行くと思う。だから、スタンプラリーのイベントはないかも……」

あたしは目をきらきらさせて言うけど、考人は相変わらず素っ気ない。
でも、今日のあたしの心の中はウキウキ気分だ。
だって、考人がいっぱい、自分の気持ちを話してくれたんだもん。
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