きっと消えない秋のせい
「杏、今日は嬉しそうな気がする……」
そう思っていたら、考人が不思議そうに首を傾げてきた。
どうやら嬉しい気持ちが顔に出ていたらしい。
昔からあたしのこういうところ、一番に気づいてくれる。
「ねえ、考人。どうして嬉しい気持ちになったんだと思う?」
「嬉しい気持ち?」
考人の真剣な声が、胸に心地よく響いた。
一気にあたしの表情の輝きが増していく。
「考人が、自分の気持ちを教えてくれたから」
特別な告白。
だけど……。
考人はそっぽを向くと、さっさと歩き始める。
「…………」
「あ。考人、待って……!」
あたしは慌てて、考人の背中を追いかけた。
来年も。
そのまた次の年も。
こうして、ずっと一緒に歩いていけたらいいな。
そんなふうに思いながら、あたしは考人の背中を見つめる。
あたしたちのやり取りを、夕陽の光がキラキラと彩っていた。