きっと消えない秋のせい


十月に入ると、秋の終わりが近づいてくる。
けれど、その前に5年生クラス対抗バスケットボール大会が待っている。
だから正直、あたしは秋の終わりよりも大会のことで今は頭がいっぱいだ。
あの一件以来、不可解な出来事は起こっていない。

もしかしたら、お願いごとの力で守られているのかも。
これからもお願いごとには、お願いごとで対抗していかなくちゃ。

そう意気込んだ朝。
学校に向かう前にいろいろと考えていたら、隣を歩く考人が話しかけてきた。

「……杏、昨日、返ってきたテスト、どうだった?」
「うーん。あまり……。考人はどう?」
「僕は……」

そう言って、考人がランドセルからテストを取り出す。
うわわっ、まぶしい。
考人は今回もほとんど100点満点だったらしい。
あたしなんて、ほとんどサイアクだったのに。
正直、超ヘコむ……と思っていたら。

「今度、一緒に勉強会する?」
「うん! 勉強会するー!」

あたしはその提案に思わず飛びついてしまった。
あの事故以来、成績がずば抜けていい考人は、学年で一番、頭がいいんだ。
うーん。以前の考人が知ったら、めちゃくちゃ驚きそう。

『はあっ!? 勉強嫌いの俺がクラスで一番、頭がいい? いやいや、あり得ないだろ!』

はああああああ!!
いやいや、大混乱かも……!!!!
よーし、あたしも負けられない。
考人に置いていかれないためにも、勉強会で頑張らなくちゃ。
ふたりきりで勉強会。そう思うとドキドキしてくる。

考人との勉強会のことを考えていたら、あっという間に放課後。
今日はずっと勉強会が楽しみで、顔がゆるみがちだった。
体育館に入ると、クラス全体が大会に向けて落ち着かない雰囲気になっていた。
それに向けての練習も佳境に入っている。
大会に出る考人は、毎日のように体育館に通い、練習に参加していた。

「考人、頑張って!」

あたしも忙しそうな様子の考人をフォローするために、体育館を駆け回っていた。
とはいえ、体育館は他のクラスの人たちも使うから、練習スペースはあまり取れない。
でも、体育館の周りを見たら、意外と多くの人たちが見学している。
そのほとんどが女の子だ。
人気者の考人と通谷くんは、普段から大会に出る人たちか、ファンの女の子たちに取り囲まれていた。
< 55 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop