きっと消えない秋のせい
「孝人、頑張ってー!!」

あたしの応援に反応するように、孝人は手を上げる。

「行くぜ、孝人!」
「おう、任せろ!」

通谷くんの言葉に応えるように。
孝人は巧みなドリブルで隣のクラスの守りをかわし、相手コートに全速力で飛び込む。
そして……相手の隙間をすり抜けるようなパスが通る。
受け取ったのは通谷くん。
通谷くんが強く床を蹴って高くジャンプした。
隣のクラスの男の子たちの手を越え、ジャンプがはるか先へ届いたと同時に。

パスッ。

通谷くんはボールをゴールネットへと放つ。
まるで羽ばたく鳥のように高く舞い、ゴールネットを静かに揺らした。

「巧、すげえじゃん!!」
「よっしゃー!!」

孝人と通谷くんは喜びを分かち合うように、右手を上げてパシンっと合わせる。
シュートをお見舞いして、隣のクラスの男の子たちを圧倒した通谷くん。
観戦していたあたしたちはそのオーラに気圧される。

「……っ」

隣のクラスの男の子たちは一瞬、表情を曇らせつつも、すぐに切り替えて駆け出した。
だが、孝人が場を翻弄し、更なる追加点となるシュートを決める。

「すごい! すごい!」

コートの中を駆け回る孝人と通谷くんは、いきいきしているように感じる。
ボールを追いかける孝人の横顔が、あの日のように輝いていた。

「みんな、頑張って頑張って!」

あたしは夢中になって孝人たちを目で追いかける。

無我夢中でバスケを楽しむ孝人と通谷くんのプレーはあの日を越えていた。
抜きん出た熱量。もう誰にも二人を止められないというように――。
もっと速く、もっと高く、もっと、もっと――。
あの日の輝きのさらにその先へ!!

接戦。
とはいえ、依然として、試合は隣のクラスの男の子たちが支配している。
だが、孝人と通谷くんの豪快なプレーに、佐東くんたちは焦りを覚えていた。

「通谷巧か。バスケクラブのエース。警戒はしていたけど、思ってたよりも速いな」
「それに深瀬も厄介だぜ」

佐東くんたちは孝人たちのプレーを重くみる。

「他の奴らとはレベルが違う。気を引きしめていこう」
「そうだな」

佐東くんの言葉に、隣のクラスの男の子たちが動く。

「ここから先には行かせないからな!」
「そうはさせるかよ!」

隣のクラスの男の子たちがボールを奪おうとしてくるけど。
孝人のドリブルは格段に上手だ。
とても細かく、相手の守りをかわしている。
背はそれほど高くないのに、リバウンドもよく取っていた。

パスッ。

見事な半円を描き、孝人のボールはゴールネットへとおさまった。
< 59 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop