きっと消えない秋のせい
「考人、頑張ってー!!」

あたしはとうとう両手を振り回して応援していた。
あたしの声なんて届かないかもしれないけれど、それでも叫ばずにはいられなかった。
ピーッ。そして、まもなく試合終了の笛が鳴り響く。

「やったー!! 勝ったー!!」
「私たちのクラスが優勝だよ!!」

最後の最後に勝ったのは、あたしたちのクラスだった。
クラスのみんなで一斉に喜び合う。
勝利に盛り上がる中、あたしの近くに考人がやってきた。

「考人ー!!」

あたしは勢いよく考人のもとに駆け寄る。

「すごかったよ。かっこよかったよ」
「……杏はいつも一直線だな」

あたしのはしゃぎように、考人は少し疲れたようにぽつりと言った。

「……ありがとう。杏が応援してくれたから、僕は――僕たちは頑張れた」
「え?」
「……なんでもない」

場の空気が温まる。
瞳に映る考人の横顔が春の温もりのように感じられた。
自然と頭に浮かぶのは、今まで彼と過ごした日々。
時には笑ってしまうような、時には泣いてしまうような思い出が溢れそうなほどにある。

「いつまでも隣にいてね、考人」
「……うん。どこにも行かない。僕も杏の傍にいたいから」

考人がうなずくと、あたしは手を上げる。
バチンとハイタッチすると、心まで軽くなるような気がした。
昨日までよりちょっと春に近い今日。
同じ思いを持ってくれていたことが、あたしはどうしようもなく嬉しかった。

『私は君を必ず、……のもとから引き離す』

幸せオーラ全開。そんなあたしたちのことを誰かがじっと見つめていた。
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