きっと消えない秋のせい


放課後、考人と通谷くんはファンの女の子たちに取り囲まれていた。
昨日の5年生クラス対抗バスケットボール大会で大活躍した影響なのか、別のクラスからも女の子たちがやってきている。

「ねえ、考人」

あたしはいつものように、考人に声をかけようとするけど……。

「深瀬くん、通谷くん。昨日の大会、すごかったね!」
「私、めちゃくちゃ感動したー」
「私もー」

わわっー。女の子のファンが取り巻いていて、考人のもとになかなかいけないよー。

「考人!」

人混みの中を通り抜けて、やっと声が届く距離までたどり着く。
そんなあたしの声音に、考人は振り返ってくれた。

「……杏、ごめん。今日は寄りたいところがあるから、一緒には帰れない」
「あ……」

あたしは『寄りたいところ』の意味を理解する。
きっと、考人はこの後、あの事故の『真実』を口止めしている人のもとに行くつもりだ。
あたしと一緒に帰ることになってからは、一人でどこかに出かけてしまうことはなくなっていたんだけど。

「……杏、隠しごとをしてごめん。でも、どうしても行かないといけないんだ。頼むから、今日はついて来ないで」

あたしの戸惑いを察したのか、考人が念押しするように言った。

うわわっ。
こ、これって、もしかして、あたしの行動パターンを読まれている!?

思わず、あたしの心臓がドキッと跳ねる。
でも、考人はそれには反応せずに踵を返し、人混みの中をすり抜けて。
教室からさっさと去っていった。

「あ、ズルいぞ、考人ー!!」

一人置き去りにされた通谷くんは、ファンの女の子たちから質問攻めにあっていた。
そのテンパりようは半端ではない。

あたしはこれからのことを思い悩む。
あの事故の真実を知りたい。
でも、考人の後をこっそり追いかけても、きっとすぐに気づかれてしまう。

うーん。どうすれば……。
お願いごとで、何とか乗り切ることができないかな……。

あたしがどうしようか考え込んでいると、結菜が視界の端を横切った。
そっと視線を動かすと、結菜を中心に女の子たちの輪が広がっていた。
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