きっと消えない秋のせい
「ねえ、考人。結菜が言っていたことは全て、ほんとのことなのかな?」

そうじゃないと否定してほしい。
でも、考人は隠すことなく大きなため息を吐いた。

「……そっか。あの事故の真実を知ったんだね」
「……っ」

その瞬間、ぞくりと全身に鳥肌が立つ。
だって、今の考人の言葉は、それが真実だと告げているみたいだったから。

「……じゃあ、性格が変わった人たちはみんな、ほんとにあの事故で亡くなったの? 今の結菜たちの中身は別の人なのかな?」
「……そうだよ。性格が変わったのではなく、中身が別人。そう考えれば、全てつじつまが合うだろ」
「……そんな」

あたしは動揺を隠せない。肩を落として、必死に頭を振る。
でも、どんなに現実逃避しても、そこにあるのは目を背けたいほどの光景で。
いろんな気持ちがせめぎ合って、心が爆発しそうだった。

「ねえ、考人もそうなの? あなたは考人じゃないの?」

その答えの行きつく先。
それは考人もまた、中身は別の人だということで。
そのことに気づいてしまった時点で、答えを聞くことが怖くなってしまう。
でも……。
考人は観念したようにうなずいた。

「……うん。今の僕は考人じゃない」

それは短い言葉だったけど。
あたしが最も聞きたくなかった言葉だった。

そんな……。

あたしは必死に何度も何度も頭を振った。
それでも油断すると、わき上がってくるのは考人への想い。
そして……冷や汗をかくような、鋭い悲しみばかりで。
まるで今までの思い出まで否定されたような気がして泣きそうになる。

「ねえ……じゃ、じゃあ、あ……あなたはだれなの?」

あたしは震える声で、おそるおそる尋ねる。
聞くのが怖い。
でも、彼はゆっくりと口を開いた。

「僕は……結城(ゆうき)朔夜(さくや)
「あ……」

その瞬間、絶望に固まっていた心が緩む。
頭が真っ白になる。
大切な人と重なって、ふたりを繋ぐ魂が鳴り響いたんだ――。
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