きっと消えない秋のせい
『一緒にお絵かきしよ?』
『……うん』

幼いあたしの誘いに、少し間を置いた後……。
男の子がやわらかく微笑む。

その微笑みは、まるで今の考人そのもので……。

ああ。何故、もっと早く気づけなかったかな。
やわらかい笑みは、あの頃と変わっていなかったのに。

「……っ」

あたしの頬を涙が伝う。
心は震えていた。
視界がかすんでよく見えないはずなのに。
姿は全く違うのに。
それでも今、目の前にいるのが『あの日の男の子』だと分かったんだ。

「さくや……さくやくん……」

視線の先には――会いたくて、会いたくて仕方がなかったあの男の子がいる――。

「どう、して……」
「…………」
「どうして、朔夜くんが……考人になっているの……」
「黙っていて、ごめん」

考人は――朔夜くんはもう一度、「ごめん」と言う。
そして、あの頃と同じように寂しそうな目であたしを見つめた。

「なん、で……」
「…………」
「だって、朔夜くんは……別の小学校に通っているんじゃ……?」

朔夜くんは首を振って悲しそうに微笑んだ。
< 69 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop