きっと消えない秋のせい
「……あ、そっか。たまに朔夜くんが考人のように感じたのは、考人の魂と繋がっていたからなんだね」
「……うん」

運命共同体になった時も。
遊園地に行った時も。
遠足でスタンプラリーをした時も。
5年生クラス対抗バスケットボール大会の時も。
朔夜くんの浮かべた表情や仕草が度々、考人と重なって見えたんだ。

「僕はずっと病院生活だったから、考人になってからは驚きの連続だった。小学校に通ったり、クラスのみんなと一緒に過ごしたり、当たり前に来る日常が何よりの幸せだったんだ」
「当たり前に来る日常……」

はっとして、視線が朔夜くんの声を追いかけていく。
ずっと病院生活。
きっと家庭の事情とか、あたしが想像できないような辛いことをいっぱい体験しているんだと思う。
当たり前に来る日常が何よりの幸せ。
その言葉の中に一体、どれだけの想いがつまっているのかな。
……『ほとんど病室で過ごしていた』と、朔夜くんは言っていた。
あたしの知らない、朔夜くんの時間。
彼は何を見て、何を感じて、亡くなったんだろう。
あたしは何も知らないし、想像もつかない。
ただ、あたしと考人との出会いが、朔夜くんの運命を変えたということだけは分かった。

「それにしても、朔夜くんたちを生き返させた人って何者なのかな。死んだ人たちを蘇らせるなんて、まるで神様みたい」
「……分からないけど、もしかしたらそれに近い存在なのかもしれない」

神様みたいな存在。
出てきた答えは笑ってしまうくらい曖昧で、でも揺るぎない。
あたしはぐいと身を乗り出すと切り出した。

「……ねえ、朔夜くん。教えてほしいことがあるの」
「……なに?」
「あの事故の真実を口止めしていた人って誰なの?」

核心に迫るその問いに、朔夜くんの瞳が揺れる。

「お願い、教えて!」

思わず声が高くなる。
そんなあたしの気持ちを汲み取ったのか、朔夜くんは真剣な面持ちで言った。
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